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見落とされてきた〈女性中年フリーター〉400万人を襲う過酷な現実

困窮しているのは、男性だけではない
小林 美希 プロフィール

二人目の子供は「贅沢品」になった

日本では、第1子の出産を機に、働く女性の5~6割が無職となってしまう。約30年前に男女雇用機会均等法ができて以来、このトレンドはほとんど変わっていない。

このなかには、「妊娠解雇」などマタニティ・ハラスメントが原因の離職も少なくないだろう。しかし、なによりも無事な出産を願う妊娠中は、トラブルやストレスを避けようと泣き寝入りしがちで、問題が埋もれてしまう。女性の中年フリーター問題が、男性に比べて見えづらくなってしまう一因だ。

〔PHOTO〕iStock

もちろん、正社員でもマタハラに遭うことは決して少なくない。残業はできて当たり前で、過重労働や左遷など、およそ労働基準法や男女雇用機会均等法が定める母性保護規定は守られていない。出産や育児に理解のない職場では、正社員であってもやむなく職場を去る女性が多い。

また、無事に一人目を出産できても「二人目不妊」の問題がある。晩婚・晩産化という要因はかねてより問題視されていたが、より深刻なのは、雇用の不安定さなどの経済要因ではないか。

公益財団法人1more Baby応援団が2018年5月に発表した「夫婦の出産意識調査2018」によると、「二人目の壁」を感じる要因として、母親全体で「経済的な理由」(84.0%)が首位となっている。フルタイムで働く母親の回答でも、「仕事上の理由」が57.8%と突出しており、職場復帰する際の影響が心配の種となっている。出産・育児が女性のキャリアに与える影響は、正規/非正規を問わない。

 

千絵さんは、あきらめ顔で次のように語る。

「本当はもうひとり子どもが欲しいけど、経済的に厳しいんです。思い切って産みたいとも思うけど、育児休業が取れるわけでもなく、産後8週で仕事を見つけて保育園に赤ちゃんを預けなければ、上の子が退園になって八方ふさがり。そう考えると二人目は躊躇してしまう。もう40歳を超えているのに」

誰かを切り捨てた経済は弱い

安倍晋三政権は「女性の活躍を」と提唱するが、およそ逆行するような雇用政策ばかりが打ち出されてきた。労働時間の上限規制の緩和、労働者派遣法の改正――。掲げている旗には「働き方改革」と書かれているが、いずれも労働者を真に守るような政策とは言い難い。

そこには「企業の良いように働かせ、いらなくなったらクビにしたい」という経済界の本音が垣間見える。労働力を「モノ扱い」する風潮は、外国人労働者にまで拡大されようとしているのが現状だ。

新著『ルポ 中年フリーター』(NHK出版新書)では、当事者たちの悲痛な暮らしをレポートするだけでなく、良質な雇用を作りだしている行政や企業の取り組みを紹介した。積極的に正社員化を進め、出産や育児をする女性にも働きやすい環境を整え、そのうえ成長を続けている企業を取材すると、そこに一筋の希望があるように思える。

だが、個々の企業の取り組みには限界がある。政治がこの問題に目を向けないことには、これからも中年フリーターの悲劇は繰り返されるのではないか。

雇用の質を改善していくことは、決して簡単なことではない。労働基準法、労働者派遣法、男女雇用均等法など、それぞれに企業にとって都合の良いように抜け穴が残されているのが現状だ。

だが筆者は、社会保障に支えられながら真に柔軟な働き方を実現するほか、「中年フリーター」という問題は解決できないと考える。そのためには、「格差是正法」などの法整備を検討する必要もあるだろう。

これまでの取材から見えてくるのは、「誰かを切り捨てた経済は弱い」ということだ。正社員を非正規社員に置き換え、非正規のまま縛り付けるような規制緩和を行ったのは明確に失政だった。そのことは、時代が十分に証明しているのではないか。

すでに「失われた30年」に突入している。この事実は看過できず、いち早く手を打つ必要がある。