# ロスジェネ # フリーター

見落とされてきた〈女性中年フリーター〉400万人を襲う過酷な現実

困窮しているのは、男性だけではない
小林 美希 プロフィール

「3年ルール」という罠

正社員登用を目指す千絵さんは、簿記や行政書士の勉強などスキルアップにも努めた。だが、3年が経とうとする直前に「次の契約更新はありません」と、あっさりクビを切られてしまう。いわゆる「3年ルール」のせいだった。

「3年ルール」とは、労働者派遣の上限を3年までとする取り決めのことだ。「3年同じ職場で働く非正規であれば、きちんと正社員採用せよ」というのが法の主旨だ。しかし、正社員を採用して人件費を固定化させたくない企業は、「法令遵守」という名のもとに、3年が経つ直前にこぞって「派遣切り」を行ったのだった。

「3年経てばポイ捨て」という状況が生じた結果、非正規職で積んだキャリアやスキルが認められず、転職活動で不利になり、また非正規で働くというループが生まれた。今となってみれば、3年ルールができた2004年を境にして、格差が完全に固定化されたと言えるのではないか。

そのうえ、3年ルールが適用されるのは、2004年当初は「専門的な26業種以外」とされていたが、2015年の法改正で専門業主も含むすべての職種に広がっている。派遣切りが横行した現実をまるで見ておらず、政府は格差を拡大させたがっているのではないかとすら疑いたくなる。

〔PHOTO〕iStock

派遣労働者は「正社員登用」に期待して必死に働いたとしても、最後にはハシゴを外され続け、あえなく中年フリーターとなってしまった。派遣労働者の男女構成比は産業によって異なるが、事務職を筆頭に総数では女性のほうが多い。3年ルールが女性の中年フリーターを生んだ一因と言えそうだ。

横行する「妊娠解雇」

また、女性の場合は出産・育児をきっかけに中年フリーターとなってしまう例も多い。出産を機に正社員の立場を失ったり、非正規雇用が固定化されたりするためだ。

先述の千絵さんが結婚したのは、学生時代から付き合っていた男性だった。彼もまた就職氷河期の煽りをくらって非正規雇用で働いていたが、「2人で働けばなんとかなるだろう」と将来を共にすることに決めた。

 

ある日、千絵さんの妊娠が発覚した。お腹の張りが強くなり、当時の上司に数日休みたいと相談すると、「何か(流産)あってはいけないので」と理由をつけられ、事実上の「妊娠解雇」に遭った。千絵さんは、それからしばらくは妊娠を隠して日雇い派遣で働くことにした。

社会全体としては、いわゆる「寿退社」は減少の傾向にあった。結婚・出産・子育てをしながら働き続けるチャンスが、少しずつではあるが増えていった。だが、就職氷河期に派遣労働を筆頭とする非正規雇用が拡大すると、「寿退社」と置き換わるように「妊娠解雇」が横行するようになった。契約満了といって、事実上の解雇が「合法的に」なされているのだ。

「不良品はとっとと返したい」

筆者が取材したある派遣社員は、派遣先の上司に妊娠を告げると、そのように言われたという。彼女は、仕事を続けるために妊娠中も月100時間の残業を強いられた。また、別の派遣社員は、必死の交渉でなんとか「妊娠解雇」を免れたが、育児休業復帰後に1回限りの契約更新でクビを切られた。こうした状況は、2018年の今もなお続いている。