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見落とされてきた〈女性中年フリーター〉400万人を襲う過酷な現実

困窮しているのは、男性だけではない
小林 美希 プロフィール

女性中年フリーター400万人の衝撃

最初に「中年フリーター」という言葉が注目を浴びたのは、2015年のことだった。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの尾畠未輝研究員が、35~54歳の非正規雇用労働者が約273万人に上ると試算したことを契機に、さまざまな議論が巻き起こった。彼らがどんな生活を強いられているかは、前回のレポートにまとめている。

だが、中年フリーターの実数は273万人に留まらないはずだ。なぜならば、先の試算には既婚女性が含まれていないからだ。千絵さんの例からも明らかなように、使い捨てのような働き方を強いられている中年女性は多い。既婚という属性だけで、数字には表れなくなっているだけなのだ。

〔PHOTO〕iStock

では、女性の中年フリーターはどれくらいいるのか。筆者は、35~54歳の非正規で働く女性のうち、扶養範囲に入るための「就業調整していない」人たちに着目した。総務省統計局「就業構造基本調査」(2017年)によれば、その数は実に約414万人にも上る。

就業調整とは、年収が一定額に届かないように労働時間等を抑える行為を指す。パートで働く主婦が就業調整をするのは、配偶者の収入等を踏まえて家計を考えると、そのほうが「お得」だからだ。逆の見方をすれば、非正規で働く中年女性で就業調整をしないということは、それだけ経済的に余裕がないからと言える。

したがって約414万という数字は、女性の中年フリーターの実数に近いと言えるのではないか。女性の場合は結婚が隠れ蓑とされがちだが、そこには「見えない貧困」が潜んでいる。きちんと実情に目を向ける必要があるだろう。

2004年に運命は決まっていた

今から振り返ってみれば、就職氷河期の恐ろしさを味わったのは男性だけではなく、むしろ女性にこそ悲惨な現実が待っていたと言える。

千絵さんが大学を卒業した2000年は、「超」がつくほどの就職氷河期だった。大卒就職率は初めて6割を下回った55.8%で、その2年後には史上最低の55.1%を記録している。千絵さんは中堅私大に通っていたが、就職活動ではエントリーシートさえ受け付けてくれない企業もあった。

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結局、千絵さんは内定が出ないまま卒業することになる。卒業後は「無職になるよりはいいだろう」とアルバイトをしながら就職活動を続け、やっと英会話の教材販売の営業職に就くことができた。

だが、その会社はいわゆるブラック企業だった。「若くても活躍できる。頑張った分だけ給料がもらえる仕組みです」と説明を受け、月給50万円も可能だと言われた。しかし、基本給はわずか5万円で、残りすべてが歩合給という仕組みだった。

千絵さんは、知識不足をいいことに個人事業主契約を結ばされ、社会保険に加入することなく働いた。だが、不況期に英語教材が売れるわけがなく、収入は月10万円にも満たなかった。「安定」とはほど遠い働き方を余儀なくされた。

 

そんな折に、「新しい働き方」と当時話題だった派遣社員に興味を持った。「正社員登用の道が開けるかもしれない」。そう考えて派遣会社に登録し、ビジネスマナーやパソコンの基礎を学ぶ研修を受けながら仕事を探した。

やがて、派遣会社を通してデータ入力など事務作業の職を得た。契約は3か月更新で時給1300円程度、手取りは約20万円。社会保険に加入できる分だけ安心を得られたが、いつ契約を打ち切られるか、3か月おきにビクビクすることが続いた。