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# フリーター # ロスジェネ

見落とされてきた〈女性中年フリーター〉400万人を襲う過酷な現実

困窮しているのは、男性だけではない

就職氷河期に就活をしただけなのにーー。ロスジェネに生まれた不運によって今も生活に困窮する「中年フリーター」たち。その悲惨な実情に光を当てた前回の記事は話題を呼んだ。

今回は、その存在が見落とされがちな〈女性の中年フリーター〉を取り上げる。女性の場合、結婚していると「苦境を脱している」と見なされがちだが、決してそんなことはない。

ルポ 中年フリーター』(NHK出版新書)を上梓したジャーナリストの小林美希氏の試算によれば、結婚後も厳しい生活環境に喘いでいる女性の中年フリーターは400万人以上。これまで推定されてきた中年フリーター(男女含む)の数をはるかに上回る。

さらに彼女たちは、妊娠、出産、子育てといった「女性特有」の問題として社会から押し付けられた過酷な現実を目の前に立ち尽くすことが少なくない。小林氏が過酷な実情をレポートする。

娘のインフルエンザをきっかけに……

「私も働かなければ家計は苦しい。けれど、あっさりクビになってしまう」

東京近郊に住む丹呉千絵さん(仮名、41歳)は、いつ生活保護を受けるようになるかと思うと、ため息が止まらなくなる。現在、食品会社で経理と営業を兼務しながらパートで働いているが、これまで子どもが病気になるたびに失職する憂き目に遭ってきたからだ。

昨年の冬までは、小さな小売店で経理のパート社員として働いていた。当時3歳の娘がインフルエンザで10日間ほど保育園に登園できなくなると、その間に千絵さんにも感染してしまい、結局は2週間も仕事を休むことになった。

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やっと出勤できたと思ったら、今度は娘が保育園で嘔吐し、職場にお迎え要請の電話がかかってきた。

これ以上は休めない……。そう思いながらも、早退していいかと上司に尋ねると、こんな言葉が返ってきた。

「決算期にこれでは当てにならない。お子さんのためにも、ゆっくり休んだら」

事実上の肩たたきだ。千絵さんは退職を余儀なくされてしまう。

「いっそ、生活保護を受けたほうが……」

千絵さんの住む自治体では、たとえ求職中でも就労しない状況が2か月経つと、保育園から退園しなければならない。千絵さんは急いで次の仕事を探し、比較的すぐ仕事を紹介してくれる派遣会社に登録した。

しかし、派遣契約は3か月更新のことが多く、最初の3か月で休みが頻繁に続くと、次の更新はなくなってしまう。職場がコロコロと変わり、千絵さんには見えないストレスが蓄積していった。そんな負担と連動するかのように、子どもが体調を崩してしまう。完全に悪循環に陥ってしまった。

 

とはいえ、千絵さんに「働かない」という選択肢はない。同級生の夫(42歳)はプログラマーだが、就職先は3次・4次の下請け会社。名ばかりの正社員で、深夜まで残業しても月給は手取り25万円程度だ。千絵さんも働かなければ家計は火の車だ。

「いっそ、生活保護を受けたほうが良いのかもしれない」

千絵さんは、そう思いながら今日もパートに出る。結婚しているからといって、経済的に安定するわけではない。千絵さんは、紛れもなく「中年フリーター」の一人だ。