真珠湾攻撃に参加した隊員たちがこっそり明かした「本音」

決して「卑怯なだまし討ち」ではない
神立 尚紀 プロフィール

気味悪く感じるほど、反撃の立ち上がりは早かった

「朝日をバックに、堂々の大編隊を見た感激は忘れられません。男の本懐、これに過ぐるものはないな、と」

そう語るのは、空母「加賀」第一次発進部隊零戦隊指揮官として9機を率いた志賀淑雄さん(当時・大尉)である。

 

「静かな日曜の朝でした。東から太陽を背にして入ったんですが、真珠湾には、ライトグレーに塗られた米戦艦が2列にズラッと並んでいました。大艦隊が朝日に映えて、本当に美しかった。これに火をつけていいのかな、とふと思ったぐらいです」

ちょうど、オアフ島北端のカフク岬が、白く映えた断雲の下から絵のように見えてきたとき、総指揮官・淵田美津雄中佐が信号銃1発を発射した。「奇襲成功」の合図である。奇襲の場合は信号弾1発で、雷撃(魚雷攻撃)隊が真っ先に突っ込み、敵に発見されたり反撃をうけたりして強襲になった場合には、信号弾2発で、艦爆(急降下爆撃)隊が最初に投弾する手はずになっていた。

「ところが、信号弾が目に入らないやつがいたのか、淵田中佐はもう1発、信号銃を撃ちました。2発は強襲の合図なんですが、状況から考えて、これは(強襲と)まちがえるほうがおかしい。あとで淵田さんに聞いたら、やはりあの2発めはダメ押しだったと。

それなのに艦爆隊が、2発めを見て強襲と勘違いして、そのまま目標に向かっていく。雷撃隊は、と見ると、単縦陣になって、まだ高度を下げつつ西海岸を回っている途中です。艦爆の一番機は、フォード島の飛行場に向かってピューッと急降下すると、250キロ爆弾を落とした。それがまた、格納庫のど真ん中に命中したんです。『馬鹿野郎!』と思わず叫びました。

格納庫からバッと火が出て、煙がモクモクと出てきた。爆煙で雷撃隊が目標を見失うようなことになれば、敵艦隊の撃滅という作戦の意味がなくなりますから、気が気ではありません。『煙の方向は?』と見ると、幸い北風で爆煙は湾口の方へ流れてゆき、敵艦隊は姿を見せたままでした。

『ああ、よかった』と思ったら、また1発。すると、何分もしないうちに港一帯、まるで花籠のように見えるほど、激しい対空砲火が撃ち上げられました。あれ、アメリカはわかってて待ち構えていたのかな、と気味悪く感じるほど、反撃の立ち上がりは早かった。

真珠湾攻撃、ヒッカム飛行場上空を飛ぶ九七艦攻(左上)

雷撃隊はまだ入らない。やがて、艦爆の攻撃がほとんど終わったと思われた頃、ようやく『赤城』の一番機が発射点につきました。魚雷を発射すると、チャポン、と波紋が起こって、白い雷跡がツーッとのびてゆく。命中したら大きな水柱が上がります」

「加賀」戦闘機分隊長・志賀淑雄大尉(のち少佐)

艦爆隊が先に投弾したために、雷撃隊は対空砲火のなか、強襲ぎみの攻撃を余儀なくされた。

このとき、空母「加賀」雷撃隊の一員(偵察員――3人乗りの真ん中の席。偵察、航法を担当)として九七式艦上攻撃機に搭乗、攻撃に参加した吉野治男さん(当時・一等飛行兵曹)は、

「突っ込むときの気分は、訓練のときと同じです。敵戦艦に向けてどんどん高度を下げていき、操縦員の『ヨーイ、テッ』という合図で魚雷を発射するんですが、私の目標にした左端の艦は、もうすでに魚雷を喰らって、いくらか傾いてるようでした。あとで知ったところでは、この戦艦は「オクラホマ」で、13発もの魚雷が命中し、転覆したそうです」

と振り返る。

「加賀」雷撃隊の吉野治男一飛曹(のち少尉)

800キロを超える重さのある魚雷を投下した瞬間、飛行機はグン、と浮き上がる。雷撃後の避退方向については機長の判断で決めることになっていたので、吉野さんはすかさず、操縦員に右旋回を命じた。が、

「これが得策ではなかった。戦艦群の真横を飛び抜ける形になりますから、向きを変えたとたん、横殴りの猛烈な集中射撃を受けた。赤い光の筋が、目の前を左から右へ、束になって行く手をさえぎりました。まるで花火のように機銃を撃ちまくられて、自分の魚雷がどうなったのかも確かめる余裕はありません。

敵弾を避けるため、とっさに上下運動を指示しましたが、操縦員が操縦桿を引いた瞬間、操縦桿にガチャンッと敵弾が命中、続いて後席にもバチンと大きな音がして、塵や埃が機内に舞い上がりました。後席に命中した一発は、電信機の太い電纜(でんらん。コードのこと)を切断し、電信員の向う脛をむしっていきました。操縦席の一発は、操縦員が操縦桿を引かなければちょうど手首をもぎ取られていたところで、間一髪でした。

被弾はすべて機体の胴体に計8発、当たりどころが悪ければ終わりです。私は『加賀』雷撃隊の5機めでしたが、後に続く7機のうち5機が撃墜され、1機の電信員は敵弾で鼻をもぎ取られました。攻撃が始まって何分もたたないのに、敵の反撃は早かった。これはもう驚異的でしたね……

また、空母「飛龍」雷撃隊の丸山泰輔さんは、

「水深の浅い真珠湾で、いかに魚雷を走らせるかに集中していて、対空砲火はあまり目に入らなかった。先に入った『加賀』雷撃隊はずいぶんやられたようですが……。私は魚雷発射後、左旋回で避退したんですが、右の方に優秀な射手がおったのかもしれません」

と語っている。

「飛龍」雷撃隊の丸山泰輔二飛曹(のち少尉)

弾幕で空が真っ暗になるくらい撃ってきた

雷撃隊が、2列に並んだ戦艦の外側を攻撃すると、こんどは水平爆撃隊(雷撃と同じく九七式艦上攻撃機)が、内側の戦艦を狙う。水平爆撃隊は、高度3000メートルから、800キロの大型爆弾を投下する。「加賀」水平爆撃隊の小隊長だった森永隆義さん(当時・飛行兵曹長)の回想――。

「高度が低いと爆弾が戦艦のアーマー(装甲)を貫けないので高高度からの爆撃になりますが、海上の小さな目標を狙うのは容易じゃありません。特別な訓練を受けた嚮導機(きょうどうき)をリーダーにして、一個中隊の5機なら5機が一斉に爆弾を投下し、そのうちの1発が命中すればいいという考え方でした。

最初に敵艦を見たときは、いやあ、いるいる、という感じですね。しかし敵はすでに合戦準備を完了していたらしく、撃つこと、撃つこと。弾幕で空が真っ黒になるぐらい撃ってきて、翼がブルンブルンと揺れるほどでした。

それで、爆撃針路に入ると、私たちの前の隊の爆撃で、一隻の戦艦の砲塔がバーンと吹っ飛んで、目の前に悪魔の火のような、赤黒い炎とものすごい爆煙が上がるのが見えました。そりゃもうびっくりしましたよ。あんな大きな爆発は見たことがない。あれが『アリゾナ』だったんでしょう。私の中隊は『メリーランド』型戦艦に2発ぐらい命中させましたが、煙で視界が遮られ、敵艦が沈むところまでは見届けられませんでした」

炎上、まさに沈没しようとする戦艦「アリゾナ」

「加賀」戦闘機隊の志賀さんは、攻撃の成功を見届けて、ヒッカム飛行場の銃撃に入った。

「港とちがって、こちらはあまり対空砲火はなかったですね。格納庫の前に大型爆撃機・ボーイングB-17がズラッと並んでて、それを銃撃したんですが、燃料を抜いてあるのか燃えなかった。

それで、ヒッカムの銃撃を切り上げて、煙のなかに飛び込んで、左に太平洋を見ながら超低空、高度十メートルぐらいでバーバスポイントの米海軍基地に向かいました。きれいな景色でしたね、トウモロコシ畑が広がっていて、赤い自動車が走っていて。

バーバスポイントには小型機が並んでいました。それで、そいつに3撃。こんどは、気持ちよく焼かせていただきました。ここでは1人、空に向けてピストルで応戦している米兵の姿が見えたそうですが、対空砲火はなかったと思います。

結局、敵戦闘機は見なかったですね。しかし、私の三番機・佐野清之進二飛曹は、バーバスポイントまでは私についてきていたのに、その後、姿が見えなくなり、行方不明になりました。佐野機はどうも敵の飛行機と空中衝突したらしい、とあとで聞かされました。

攻撃が終わって、戦果確認をしようと真珠湾上空、高度5000メートルまで上がってみましたが、上空から見たら、真珠湾は完全に一つの雲のような煙に覆われ、ときどき、そのなかで大爆発が起こっている。地面も海面も、ほとんど見えない状態でした。よし、完全にやっつけたな、これでよし、と思い、バーバスポイントの北、カエナ岬西方10キロ上空、高度2000メートルの集合地点に向かいました」