ゴーン事件、このままいけば日本が「無法国家」と呼ばれる恐れアリ

刻々とタイムリミットは迫っている
伊藤 博敏 プロフィール

確信犯だが…

この、グレー領域ではあっても違法ではなく、合法の範囲という“しつらえ”は、すべての領域に及んでいた。

例えば2010年に、ベンチャー投資目的でオランダのアムステルダムに、資本金60億円設立されたジーア・キャピタルBVである。投資実態は、租税回避地に孫会社を設置して、ブラジルのリオデジャネイロやレバノンのベイルートといったゴーン容疑者の母国に、住居を設置するものだった。

ケリー容疑者は、部下に連結決算から外すように指示、監査法人も別にした。日産の監査法人が「投資目的に沿っていないのではないか」と、指摘した際は、「適正な投資」と答え、詳細は明かさなかった。

確信犯だが、「住居は要人を招いたパーティーなどにも使う」と主張されれば、私的利用を指摘するには、詳細な実態調査が必要になる。また、特別背任の「会社に意図して損害を与えた」という立証は難しい。

 

実姉へのコンサルタント料の支払いや家族旅行代、私的なプライベートジェットの使用、飲食のつけ回しなどについては、「24時間の勤務体制を強いられるCEOにとっては必要経費」といった“強弁”も成り立つだろう。

ブラジルに生まれ、レバノンに育ち、フランスで学び、三ヵ国に国籍を持つコスモポリタンのゴーン容疑者にとって、自分の存在意義を確認するのはカネと地位であり、我が身を守る術は、法律である。

強欲は存在の証で、カネと地位は法によって守らねばならない。ゴーン容疑者をサポートし、個人的な世話まで行なうのは日産CEOオフィスで、その担当は14年までがケリー容疑者で、以降がマレー英国人の専務執行役だった。2人はともに、弁護士資格を持ち、ゴーン容疑者を法的にも守った。

一方、そうした地位もカネもある権力者に対峙する時、特捜検事にとって大切なのは「素朴な正義感」である。