ゴーン事件、このままいけば日本が「無法国家」と呼ばれる恐れアリ

刻々とタイムリミットは迫っている

「無法国家」のレッテル貼りの危機

日産元会長のカルロス・ゴーン容疑者を逮捕した東京地検特捜部が迷走している。日産を私物化した強欲の数々が表面化、「逮捕やむなし」という国民への印象操作には成功したが、起訴案件がいかにも弱い。

年間10億円の報酬を有価証券報告書に記載していなかったという金融商品取引法違反だが、「従業員のモチベーションを下げたくなかった」という本人の不記載理由と会わせ、「オーナー経営者ならありそうなこと」である。ゴーン容疑者はオーナーではないが、絶対権力者の「帝王」だった。

記載すべきを記載していない形式犯で、90億円の不記載分を2回に分け、10日に50億円分で起訴して40億円分で再逮捕、30日の年末ギリギリまで勾留するという。海外のメディアが、否認していれば出さないという日本の刑事手続きを、“歪み”として報道するのも無理はない。

まして、日本には起訴後も逃亡や証拠隠滅の恐れがあるとして否認の被告を勾留し続ける起訴後勾留が一般的。悪名高い「人質司法」だが、世界に知られた自動車業界のカリスマ経営者を、来年以降、3カ月、半年と留め置けるものだろうか。

 

電撃逮捕の衝撃が収まった今、メディアで報道されているのは、90億円の引退後報酬を巡る神経戦である。特捜部は、支払いは確定、その証拠もあるといい、ゴーン容疑者と側近で共犯逮捕のグレッグ・ケリー容疑者は、確定していなかったという。

確定が記載を義務付けるから認定は重要。そのため報道は微に入り細を穿つが、国民的な関心は薄い。ゴーン容疑者が、先払いでもらおうと、後払いを工作しようと、それは「ゴーンの勝手」である。

許されないのは、世界各国に日産のカネで自宅を持っていたこと、実姉へのコンサルタント料など会社私物化の数々、そして巨額報酬をキチンと納税していたのかという疑惑である。

もともと「ゴーン逮捕」は、日産プロパー幹部が、ルノー側に“寝返って”日産をルノー傘下にしようとしたゴーン容疑者に対するクーデターであり、それを官邸(経産省)が後押しし、日産側の司法取引を得て特捜部が乗り出した「国策捜査」だった。

国策であっても、ゴーン容疑者の強欲を罪として立件しなければ、日仏だけでなく世界の理解は得られない。「国益のためだけに、世界第2位の自動車アライアンス(連合)のトップを逮捕した無法国家」のレッテルを貼られよう。

久木元伸・東京地検次席検事は、記者会見で「単なる形式犯ではく、金商法のなかでも重い犯罪類型」と、説明した。だが、経営トップが報酬を後取りする不記載工作が、逮捕を繰り返し、長期勾留を続ける説得力ある理由にはならない。

やはり、不記載は形式犯であり、入口であるべきだろう。特別背任、業務上横領、脱税など「逮捕、勾留もやむなし」と思わせる犯罪の立件が必要だ。

それがなぜできないのか。それは、ゴーン容疑者の「合法」へのこだわりゆえである。取り調べに対してゴーン容疑者は、「合法的に」と、ケリー容疑者に指示し、ケリー容疑者もまた、外部の弁護士、公認会計士などに相談して確認、金融庁にも問い合わせ、「問題ない」との回答を得たという。