3日待ったら鮮やかな絵が出現!「微生物アート」の奥深き世界

赤富士もお花畑も自由自在です!
リケラボ プロフィール

その結果がこちら!

今回、リケラボ編集部は微生物アート初挑戦だったため、少し線がガタついているところもありますが、先生に教わった通りに描いたらきちんと絵があらわれました。

ちなみに、青紫色の部分は「ジャンチノバクテリウム」黄色の部分には「スフィンゴモナス」という細菌を使っています。

どの微生物を使えばいい色が出せるのでしょうか。田中先生おすすめの微生物を、色別に以下の表にまとめました。

続いて微生物アートの魅力について、田中先生にインタビューいたしました。

田中靖浩 先生
山梨大学生命環境学部環境科学科准教授。
未知の細菌の発見をメインに研究。論文を出していないものを含めてこれまでに100種以上の新しい細菌を発見している。細菌分類における新たな「門」を発見したことも(これまでに発見されている細菌の門は30ほど。そのうちのひとつを見つけるという大発見!)。微生物を使った環境浄化やバイオエタノール生産などへの応用など環境全体の改善にも取り組む

あなたの手のひらの微生物にも色があります

──田中先生はどうして微生物アートを始めたのですか?

「僕は微生物の研究が専門で、主に未知細菌の探索をしています。そのなかで、さまざまな環境サンプルを対象に細菌の分離をしていたところ、田んぼなどにプカプカ浮いている身近な水生植物の『ウキクサ』から、ほかのサンプルに比べて、白やピンク、黄色などカラフルで多様な菌が出てきたんです。

それを見て、『これは一種のアートだな』と思いました。それで、この色を絵の具の代わりに使って絵を描いたりすれば楽しいんじゃないかと思ったのがもともとのきっかけですね。

さらにさかのぼると、僕は学生時代にメタノールを食べる細菌の酵素を研究していて、遺伝子をクローニングするために大腸菌を扱っていたのですが、そのときに遊び半分で細菌を使って自分の名前を書いたりしていたんです。これは多分、微生物の研究をしている人なら、だいたい一度はやったことがあるはず(笑)。

今思えば、こういった経験がルーツになっているのかもしれないですね」

──微生物アートの面白さはどんなところだと思いますか?

「描いていてもそのときには仕上がりがわからないところが、難しくも面白いところだと感じています。

いざ育つと想像とは違った増え方をしていたり、それが返って良い味になっていたり。思い通りにならないところは、絵の具ではなく微生物を扱っているからこそのことですよね」

──微生物の色の違いにはどんな意味があるのでしょう?

「簡単にいえば持っている色素が違うからなのですが、たとえば赤い色だと紫外線の照射に対して強かったり、緑だと光合成する機能があったり。このように、色素にも役割がある場合が多いです。

ちなみに、人間の身体にも、表皮や体内に細菌をはじめとした微生物がいっぱいいて、その数は数百兆から一千兆にものぼると言われています。

そもそもヒトの細胞数が37兆個なことを考えてみても、ものすごく膨大な数の微生物がいるということが実感できると思います。だから、手のひらなどを寒天培地にパッとつけてみると、数日後にさまざまな細菌が生えてきます。

ここで面白いのが、人によって細菌の色の傾向などに違いが見られること。僕の場合は白っぽい細菌が生えてくるのですが、人によってはカラフルだったりします。DNAが同じ一卵性双生児でも、保有する細菌に違いが見られるんですよ。

これを活用して、犯罪捜査に役立てようと研究しているアメリカのチームもあります」

──微生物アートが本業の研究に良い影響を与えることなどもあるのでしょうか?

「やはり、良い息抜きになっていると感じています。あまり研究のことばかり考えていると、煮詰まってしまって良いアイディアが出なくなってしまいます。そのときに息抜きできれば、頭がリセットされてまたアイディアが浮かんでくることもあるはずです。研究には良い息抜きが必要ですからね。

それと、まだ微生物を扱いはじめたばかりの学生さんなどは、アートを通じて細菌が生えてくるスピードや感覚などを掴みやすくなるなど、微生物の培養に慣れるひとつの良い手段にもなっているのではないでしょうか。

僕は研究には遊び心も必要だと考えているので、面白いことをやってみよう、見た人を驚かせよう、という気持ちは、研究にも微生物アートにも通じていることかもしれませんね」

田中先生が新しい細菌の「門」を発見した時も、「細菌がお腹を壊さないように」培地を工夫したことが成功ポイントだったそうです。研究の息抜きにもなる微生物アートで、楽しみながら培養スキルを磨いていけたらまさに一石二鳥ですね。
読者のみなさんも、研究の合間にチャレンジしてみてはいかがでしょうか?

(本記事は「リケラボ」掲載分を編集し転載したものです。オリジナル記事はこちら