万引きで人生台無し…やめたくてもやめられない「病気」の困難

データで見る、処罰と治療の効果
原田 隆之 プロフィール

エビデンスを司法に

もちろん、その罪の大きさ、被害者や社会の安全、処罰感情などを考慮すれば、公正なる裁判の結果、懲役刑という選択肢が必要であることは否定しない。日本は法治国家である以上、それは当然のことである。

しかし、懲役刑はあくまでの最終手段としてとらえるべきであり、再犯抑制効果という面からみても、コスト面からみても、執行猶予や保護観察などの枠組みのなかで、社会内での治療を優先させるのが一番エビデンスに基づいた方法である。

その点からも、今回の判決は画期的なものであったと言ってよいと思う。

しかし、残念ながら、このようなエビデンスが社会に広く共有されているとは言い難いのが現状である。

したがって、司法関係者、政治家、マスメディア、そして国民一般の人々に、このような研究の蓄積たるエビデンスを知ってもらうこと、そして刑事司法の領域にも行動科学の知見が生かされるように尽力することが、犯罪心理学者としての私の1つの使命だと思っている。

 
【参考文献】
1 American Psychiatric Association (2010) The Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders (5th ed.; DSM–5). Washington DC: APA.
2 樋口進(編)(2018)現代社会の新しい依存症がわかる本 日本医事新報社
3 Bonta J & Andrews DA. (2016) The Psychology of Criminal Conduct (6th ed). New York: Routledge(原田隆之訳 犯罪行動の心理学 北大路書房).
4 原田隆之(2015)入門犯罪心理学 ちくま新書
世界中で最も読まれている犯罪心理学の教科書