独占告白!ゲノム編集双子を誕生させた中国人学者の苦しい「言い分」

米国人協力者も登場、驚愕の大型ルポ!
マリリン・マルキオーネ

HIV感染者への差別が背景に?

賀氏は数年にわたって実験室内でのマウスやサル、ヒトの胚のゲノム編集を実践してきており、自らの手法について「複数の特許を申請中だ」と語った。

さらに、HIV関連の胚遺伝子を編集することにした理由として、HIV感染が中国で大きな問題になっていることをあげた。

賀氏が目指したのは「CCR5遺伝子」を無効にすることだ。この遺伝子が作り出すタンパク質は、AIDSの原因であるHIVウイルスを細胞内に侵入させる入り口になる。

プロジェクトの参加者は、男性が全員HIV陽性、女性が全員陰性だったが、「今回のゲノム編集は、わずかにある感染のリスクを防ぐことがねらいではありませんでした」と賀氏は語る。

男性被験者からの感染は標準的なHIV治療薬によって十分に抑えられているし、遺伝子操作をともなわずに子どもへの感染を防ぐ簡単な方法もある。

実際のねらいは、HIVの問題を抱えているカップルに、彼らの子どもを同じ運命から守る機会を与えることだった。

賀氏は、北京に拠点を置くAIDS患者擁護団体「白樺林」を通じて、研究に参加するカップルを募集した。「白樺」の偽名で通っている同団体代表はAP通信に対し、「HIVへの感染が明らかになった場合に、職を失ったり、医療を受けるのが困難になったりするのは珍しくないことだ」と語っている。

 

実際にHIVへの感染は食い止められるのか

賀氏は、今回の研究を次のように説明した。

ゲノム編集は、体外受精、つまり実験室の培養皿で受精する際に実施された。まず精子を「洗浄」して、HIVが潜んでいる可能性がある精液を取り除いた。次に、1個の精子を1個の卵子に注入して、胚を作り出した。その後、胚にゲノム編集ツールが注入された。

受精後3日から5日に、胚から少数の細胞を採取し、編集の状態をチェックした。カップルは妊娠のために、編集した胚と編集していない胚のどちらを使うか選ぶことができた。

全体としては、22個の胚のうち16個が編集され、6回の胚移植で11個の胚が使われた。その結果、双子の妊娠にいたったと賀氏は説明している。

検査の結果、この双子の1人では、ねらった1対の遺伝子の両方が改変されていたが、もう1人では片方しか改変されていないことがわかった。また他の遺伝子を傷つけた証拠は見られなかったという。

改変された遺伝子が1個の場合、依然としてHIVに感染する可能性がある。ただし実際に感染した場合でも、病状の進行が遅くなることが、限られた範囲の研究によって示されている。

だが、賀氏がAP通信に提供した資料を検討した数名の科学者は、「これまでの検査が不十分なため、編集が有効だと述べることも、損傷の可能性を除外することもできない」と語っている。

この科学者らは、編集が不完全であることや、双子の少なくとも1人はさまざまな変化を持つ細胞のパッチワークのようにみえることを示す証拠についても指摘している。

結局は人体実験なのか

ハーバード大学のチャーチ教授は、特定の細胞の一部しか改変されていなければ、HIV感染がやはり起こりうるので、「まったく編集していないようなものだ」と述べている。

チャーチ教授とペンシルバニア大学のムスヌル博士は、使われた胚のうちの1個について、それを「妊娠のために使用してよい」と判断したことを問題視している。中国人研究者らが、「その胚の対象遺伝子の両方が改変されていないことを事前に知っていた」と言っているためだ。

「その子どもにはHIVへの防御という点ではほぼ何の利益もなかった。さらにその子どもを安全上のあらゆる未知のリスクにさらしている」(ムスヌル博士)

その胚を使用したことは、研究者らが「病気を回避することよりも、編集技術をテストすることに重きを置いていた」ことを示唆している、とチャーチ教授はみる。

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