ある中国人研究者が、「世界初となるゲノム(遺伝子)編集ベビーを誕生させた」と主張している。
この赤ちゃんは、11月に生まれた双子の女児で、そのDNAの操作には、生命の設計図そのものを書きかえることができる、新しい強力なツールを用いたという。
もしこれが本当の話なら、科学や倫理の面であまりに飛躍しすぎた行為だといえる。
ある米国の研究者が「中国でこの研究に参加した」と証言しているが、米国ではこうしたゲノム編集は禁止されている。DNAの変化が何世代にもわたって受け継がれる可能性があることや、他の遺伝子が傷つくおそれがあることが理由だ。
主流派の科学者のあいだでは、「この遺伝子編集は試みるには危険すぎるものだ」という意見が大勢を占めており、この報道をうけて「人体実験だ」として非難する声もある。
まだ証拠は示されていない
この研究者は、広東省深セン市の賀建奎(が・けんけい、He Jiankui)氏だ。
賀氏は、7組の夫婦に不妊治療を実施した際に、胚の遺伝子を操作し、これまでに1組が妊娠したと語っている。
彼自身の目標は、遺伝性疾患の治療や予防ではないという。「将来的なHIVウイルス(後天性免疫不全症候群〈AIDS〉の原因ウイルス)感染への抵抗力という、生まれつき持っている人が少ない形質を与えようとすることです」と説明した。
賀氏は、双子の両親が身元の公表やインタビュー取材を拒否しているとし、両親の居住地や、ゲノム編集が実施された場所については明らかにできないと語っている。
賀氏の主張には、第三者による裏付けはない。さらに、他の専門家が査読する学術ジャーナルでの論文発表もしてない。
彼は今回の研究について、11月26日に香港で、翌日から始まるゲノム編集国際会議の主催者に語ったが、それに先だってAP通信の独占インタビューでも明らかにした。

賀氏はAP通信に「これが世界初となるだけでなく、前例となることに、強い責任を感じています」と語った。
こうした科学研究を認めるか、あるいは禁止するかという点については、「次にすべきことは社会が決めるでしょう」と述べている。