M-1優勝・霜降り明星が本来的に持っていた「売れる要素」

「よしもとの宝」とはそういうことか

「例外」が目についた本大会

12月2日に行われた漫才日本一を決める『M-1グランプリ2018』で優勝を果たしたのは、芸歴6年目の霜降り明星だった。

お笑いファンの中でも彼らの優勝を予想していた人はそれほど多くなかったのではないだろうか。なぜなら、彼らよりも先輩で経験豊富なファイナリストが何組も出場していたからだ。大方の予想では何度も決勝に進んでいる和牛やスーパーマラドーナが優勝候補だと思われていた。

そのような予想が目立つ背景にあるのは、2015年に『M-1』の出場資格が従来の「結成10年以内」から「結成15年以内」に変わり、それ以前の大会よりもレベルが格段に上がってしまったことだ。2015年以降の『M-1』では、優勝しているのも上位に食い込んでいるのも大半が結成10年以上のベテラン組である。

 

それ以前の『M-1』では、技術だけでなく発想やセンスが評価されるような風潮もあった。だが、2015年以降の第二期『M-1』では、全体のレベルが上がってしまったことで、発想やセンスだけでは明確な差がつきにくくなり、技術的な要素が勝負を左右する鍵になっている。技術の差は一朝一夕で埋まるものではないため、どうしてもベテランが有利になる。今年の大会もそういう結果になるだろうというのが大方の予想だった。

ところが、平成生まれのフレッシュな2人がこの予想を見事に覆した。霜降り明星は若手芸人の中でも早くから頭角を現していた。粗品はアマチュア時代にピン芸人として関西若手芸人の登竜門と言われる『オールザッツ漫才』の「FootCutバトル」で優勝。斬新な視点のフリップ芸で爆笑をさらい、圧倒的なセンスを見せつけていた。

一方のせいやも、幼い頃からお笑いが好きで、中学時代には漫才でテレビに出たこともあった。そんな2人は高校時代にも漫才に打ち込み、別々のコンビとして高校生の漫才コンテスト『ハイスクールマンザイ』に挑むライバル同士だった。プロとしての芸歴は6年目だが、アマチュア時代も含めるとお笑いに専念してきた時間はそれなりに長い。

そんな彼らは、平成最後の『M-1』でその底力を見せつけた。初期に比べると、ここ数年の『M-1』は緊張感でピリピリしたムードになることも少なく、どちらかと言うと温かい雰囲気だったのだが、今年は例外だった。

番組の放送時間が長くなったことで、審査員のコメント量が増えた。審査員はコメントを求められれば、低い得点を付けた芸人には多少は厳しい言葉をかけざるを得ない。全体の得点が低いのに全員が褒めてばかりでは不自然に見えるからだ。

1番手の見取り図、2番手のスーパーマラドーナはいずれも点数が伸びず、やや重い空気になった。3番手のかまいたち、4番手のジャルジャルが盛り返したが、大爆発とまではいかない。その後、ギャロップ、ゆにばーすがいずれも振るわなかった。

本命視されていたスーパーマラドーナなどが結果を出せず、審査員からも酷評されたことで、やや重苦しいムードに包まれていた。そんな中で、9番手の霜降り明星はそんな空気を一気に振り払い、大爆笑を巻き起こした。彼らは決勝ファーストステージを1位で通過して、最終決戦でも勢いそのままに優勝を果たした。