猪味噌漬け焼き(写真はすべて筆者撮影)

日本人にとって「ジビエ文化」とは何か? 一大ブームの行方

平成食トレンドを振り返る

「古くて新しい」ジビエ文化

冬支度が始まるこの時期、飲食店の季節メニューにお目見えするようになったのが、シカ、イノシシなどを使ったジビエメニューだ。

野生動物を食べるジビエ文化は、日本人にとって古くて新しい習慣である。なぜ「古くて新しい」のか。まずは新しさのほうから考えたい。

ここ数年、ジビエを出す店が増え、ブームが到来している。報道が目立ち始めたのは2013年。朝日新聞ではこの年、10月19日の生活面で「ジビエ シカ肉身近に」と題する記事で、カレーハウスCoCo壱番屋やベッカーズといったファストフードチェーン店でシカ肉料理が提供されていることを報じた。

また、11月17日の首都圏版でも「ジビエ食欲の秋」と題する記事を出している。その中で、シカ肉バーガーを監修した長野県茅野市のレストランオーナーシェフで、日本ジビエ振興協議会代表の藤木徳彦氏が「普及の課題として肉の価格の高さや調理の工夫不足、流通の問題などを挙げた」。

どちらの記事も、背景にある獣害問題に言及している。野生動物が農作物を食い荒らすといった獣害の深刻さを伝える報道も、同じ頃から全国紙で紹介されるようになった。ジビエは今、日本において、獣害問題と切り離しては語れないのだ。

人気の高まりを受け、2014年にはぐるなび総研が選ぶ「今年の一皿」に、ジビエ料理が選出された。

鹿タタキ(ポン酢和え)高円寺「ジビエ猪鹿鳥」

「今年の一皿」は、同社がぐるなびのユーザーと会員に対するアンケートをもとに、メディア関係者が審査して選ぶもので、その年の世相を映し、かつ後世に残したい「食」であることが条件。

この年が最初の選定で、2015年にはおにぎらず、2016年はパクチー料理、2017年には鶏むね肉料理が選ばれている。

2014年にジビエ料理が選ばれたのは、厚生労働省が「野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針」を作成したことで、提供が本格化したことなどが理由。

従来はジビエ料理の伝統があるフレンチなど洋食店が中心だったが、飲食店経営の株式会社夢屋が東京で「焼きジビエ罠」の1号店を2013年2月に開くなど、居酒屋や焼き肉店が増えた。

ぐるなびに登録されているジビエ料理を出す居酒屋・焼肉・ホルモン・鉄板焼きの店は、2015年11月から2018年11月までの間に、全国で約2.5倍にも増加している。

 

ジビエと家畜肉の味の違い

ジビエと従来の家畜肉との味の違いは、どこにあるのだろうか。

家畜は毎日安定的に飼料を与えられ、小屋などで飼われるため、肉の脂肪分が多い。霜降り牛などあえて脂肪分を増やす飼育法を行っている家畜もある。

生産性を上げるため、例えば豚肉なら数ヵ月で出荷するなど、飼育期間も短い。そうして提供される肉は、若くて脂肪分が多いため身が柔らかく脂身のジューシーさが売りになる。

一方、ジビエは山中を駆け回って自ら餌を探してきた動物を捕獲するので、あっさりした赤身が中心になる。

しかし、適切に処理・調理されたジビエは、かたくて食べにくいとは限らない。噛み応えがあると同時に、味わい深さもある。

そして、肉の種類、部位、個体により、多彩な味わいが楽しめる。さらにジビエ通は「同じシカやイノシシでも、ものによって味が違うから面白い」と語る。

ジビエは、私たちが「肉」とひとくくりに理解しがちなものを、魚介類と同様、多様な生き物の筋肉であることを気づかせてくれるのだ。