種子法廃止で「得する人たち」の狙いと思惑

なぜ十分な議論なく法案は通ったのか
尾崎 彰一 プロフィール

そのような状況下で、種子法廃止に絡み気になる点が明るみに出てきた。種子法廃止法案は、単体で国会に出されたわけでなく「農業競争力強化」政策に関する他の7つの法案とともに出されている。<http://www.maff.go.jp/j/law/bill/193/index.html>

その中の「農業競争力強化支援法」の第8条4項に、こう書いてある。少し長いがぜひ読んでほしい。

「種子その他の種苗について、民間事業者が行う技術開発及び新品種の育成その他の種苗の生産及び供給を促進するとともに、独立行政法人の試験研究機関及び都道府県が有する種苗の生産に関する知見の民間事業者への提供を促進すること。」

長年多額の税金を投入し、育て守り続けてきた国民の知的財産を、民間企業に明け渡すようにと記述されているのだ。民間事業者なので外国資本の企業でも排除しないということになる。

日本で育まれた種子の遺伝資産を基に、多国籍バイオ企業がそれを改良し、特許を取る。もともと高品質の日本の稲の種子は、莫大な利益を長期に渡って生み続けるだろう。

一般国民の感覚としても非常に違和感を覚える。このことが日本のためになるのだろうか。

種子法廃止の背景にあるもの

アメリカ国内における遺伝子組換え作物の種子市場は、すでに飽和状態になっていると言われている。

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その背景には、近年の遺伝子組み換え食品表示の義務化を求める住民の反対運動が全米に広がっていることがある。2014年4月には、バーモント州で全米初となる「遺伝子組み換え食品の表示に関する法律」が成立した(2016年7月から施行されている)。

また除草剤などの残留農薬により、腸の善玉細菌が死滅し健康被害を訴えるケースや、除草剤を使用し続けたことによる発ガン性も認められた。

2018年8月、米サンフランシスコの裁判所で、カリフォルニア州在住の末期ガンの男性が、モンサント社の除草剤のせいでガンになったと訴えていた裁判で、モンサントに約2億9000万ドル(約320億円)の支払いを命じる評決が出ている。

そんな状況のアメリカからすれば、日本のコメの市場は、手付かずのビッグマーケットに見えているのかもしれない。

日本の稲の種は、非常に高品質でありながら安価で安定している。また全国の各都道府県で地域の気候や土壌にあったコメが品種改良を重ね生産されている。冷害や病気による不作の際に、他府県の種を使用してカバーすることができる素晴らしいバックアップシステムではないか。

日本は山間部が多く、元々大規模農場に向いていない。各地域に根ざした小規模農場の集合体が、食の豊かさを支えてきた。