「種子法廃止」は日本の農業に「こんな悪影響」を及ぼすかもしれない

あまり議論がされていないが…
尾崎 彰一 プロフィール

種子法廃止の影響はどこまで広がるのか?

種子法は、国から都道府県へ出される補助金の根拠法になっている。種子法が廃止された今、この仕組みを維持する予算がいつまでつくのか危ぶまれている。

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当然予算がつかなければ、今後各地のブランド米の種の供給を維持するためには種子の値段を上げざるを得なくなってくる。市場の米の価格は高騰するだろう。

原種・原原種の開発・管理には、非常に手間隙とコストがかかる。丁寧な育成と厳格な審査をクリアしなければいけない。税金を投入して種を生産しているからこそ、農家は高品質な種を安く安心して仕入れることができた。

根拠法がなくなったことで、予算の配分が変わる可能性もある。奨励品種を多く持つ米どころの自治体は、今のやり方を維持するように努めるだろう。現に種子法廃止を受けて、条例で同制度を維持する動きが新潟県を始め各地で起きている。

しかし一方で、福祉や教育など他に予算を回したい自治体もあるだろう。各地で大きく取り組み方が変わってくる可能性は大いにある。

長期的に見て怖いのは、種子の多様性が失われてしまうことだ。

 

日本では各地域に合ったコメの品種が在来種として作られ、コメの多様性を保っている。稲だけで約400品種ものタネの採取を続けてこられたのも、種子法によって予算が確保できていたおかげである。各地域の試験場職員と農家の方々の、創意工夫と気の遠くなるような地道な品種改良、そして徹底した管理の賜物である。

もし米の値段が高騰すれば、民間企業の種子も参入しやすくなる。現在は、民間種子の品種のお米は高くて、なかなか市場で売れない。

さらに、日本企業のみならず海外の多国籍バイオ企業の種子も本格的に入ってくるだろう(すでに試験的に入っている)。その時入ってくる種子は、後に説明するF1種であり、更には遺伝子組換え種子である。

仮に民間企業の輸入種子が日本に入ってくれば、現在、非常に厳格に管理されている圃場に悪影響を及ぼす危険性がある。日本にはなかった病気が広がったり、外来の害虫や雑草も心配だ。

徹底した管理で原種・原原種の遺伝的純度を高めてきたにもかかわらず、輸入種子の農場から飛んでくる花粉により受粉し、台無しになる可能性もある。新たに参入してくる民間企業に、徹底した管理とその費用を求めることができるのだろうか。

経済合理性だけに任せれば、売れる品種や収量の多い品種に集中してしまう。そうなれば病気による壊滅的な被害が出る可能性がある。

19世紀中頃にはアイルランドで、ジャガイモ疫病が発生し、当時の人口が半減するほどの大飢饉に陥った。またアメリカでも1970年代、トウモロコシごま枯葉病の発生で、後述する雄性不稔株を利用したF1種のトウモロコシに甚大な被害が出ている。