ライザップが「禁じ手」に走った構造的理由

その原因は日本経済にあり
加谷 珪一 プロフィール

立て直し後は「つまらない」会社に?

外食産業の世界では、同一の店舗を拡大させるチェーンストア理論が経営の基本だが、今の日本では単一業種、多店舗展開ではなく、複数業種、多店舗展開を目指す企業も多い。

業種が複数になると、内装の発注やマニュアル作成、人材シフトなど、あらゆる面で効率が悪くなるが、需要が拡大しない中では、目新しい業態を次々に開拓していかないと顧客を確保することができない。

ライザップのM&Aもこうした市場環境の延長線上にあり、これは消費が弱体化している日本経済ならではの現象といってよいだろう。その意味では、瀬戸氏個人に依存した経営が限界に来たところで、同社の急成長が頓挫するというのは予想できた展開ということになる。

日本社会は論理や知性より情緒が優先されるので、奇を衒った戦略は世間の耳目を集めやすい。実際、初期のライザップには市場から異様なまでの期待が寄せられ、その結果として同社の資本政策は有利に進んだ。期待値が過剰に高いうちに、やれるだけのことをやっておきたいと瀬戸氏が考えたとしても不思議ではない。

 

今後は、外部から招聘したプロ経営者である松本晃氏(カルビー前会長)が中心となって、既存事業の整理が行われることになる。財務的に厳しい場合には増資といったファイナンスもあり得るだろう。既存事業の整理がうまくいけば、同社は今後も存続できるだろうが、場合によっては買収した会社を次々と売却し、同社が事実上、解体されてしまう可能性もある。

ライザップの事業立て直しが成功しても、瀬戸氏に依存した多業種M&Aが打ち止めだとすると、今後の選択肢は限られてくる。皮肉なことだが、立て直し後のライザップは、つまらない会社になっている可能性が高そうだ。