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ライザップが「禁じ手」に走った構造的理由

その原因は日本経済にあり

破竹の勢いで成長してきたRAIZAPグループの赤字転落が大きな話題となっている。ライザップは異業種の会社を次々と買収するという、これまでにない経営スタイルで急成長してきたが、この独特の経営スタイルは、良い意味でも悪い意味でも今の日本経済を象徴している。ライザップが生まれた必然性と今後について考えてみたい。

あの経営手法は、錬金術でも何でもない

RAIZAPグループの成長を支えてきたのが、矢継ぎ早に実施されるM&A(合併・買収)だったことは多くの人が認めるところだろう。同社の中核となっているのは2003年に設立された健康コーポレーションという企業で、2006年に札幌証券取引所アンビシャスに上場したが、当時はよくあるネット通販企業のひとつに過ぎなかった。

ところが同社は、上場で得た資金をもとに次々と企業を買収し、業容を一気に拡大させた。2012年には、快進撃のきっかけとなるトレーニングジム「ライザップ」の1号店を神宮前にオープン。大々的な広告宣伝で世間一般の知名度を高めるとともに、多角的な買収をさらに推し進めるようになった。

2016年4月には出版社の日本文芸社、2017年2月にはジーンズメイト、同年3月にはフリーペーパーのぱどに、2018年にはサンケイリビング新聞社に資本参加するなど、著名企業の買収にも乗り出した。

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あまりにも業容拡大のペースがはやいので、市場やメディアから過度に称賛される一方、一部からは奇異の目で見られ、錬金術ではないかと批判する声も上がっていた。だが、同社の経営実態を詳しく調べると、派手なイメージとは裏腹に、採用してきた経営手法は特に目新しいものではないことが分かる。

一般的に事業会社のM&Aはそれなりの業績を上げている企業を買い取るケースが多く、実施には多額の資金が必要となる。業績が傾いた企業であれば安く買収できるが、こうした企業の立て直しにはそれなりのノウハウが必要となるので、多くが専門投資ファンドの領域となる。だが、ライザップは、あえて業績不振の企業を狙ってM&Aを実施し、買収金額を安く抑えてきた。

 

異質なのは「他業種のM&A」を実施していること

例えば日本文芸社は売上高が40億円を超える出版社だが、買収される直前は億単位の赤字を垂れ流していた。買収のためにライザップが投じたのはわずか20億円である。

買収金額が、買収される会社が持っている資産額を下回っていた場合、会計上、差額分が損益計算書上に利益として計上される。業績が悪化した会社を買収のターゲットにすれば、圧倒的に安く会社を買うことができ、しかも、差分を利益にできる。

一部の識者やメディアは、この手法について「利益のかさ上げ」「錬金術」などと批判しているが、これは正しい評価とはいえない。M&Aを実施するにあたってできるだけ安く買うのは当然のことだし、ルール上、利益に計上するのが決まりになっているので、そのように会計処理しているに過ぎない。

このルールについては、多少の会計知識がある人なら、当然、理解しておくべきことであり、同社は「負ののれん代」を適切に会計処理し、ルール通りに開示しているだけである。このことをもって同社の経営を「粉飾まがい」といったトーンで批判するというのはスジ違いだろう(利益の拡大を狙って業績不振の会社を買収していたのは事実だろうが、これはひとつの戦略である)。

しかしながら、同社のM&A戦略が、経営学的に見て異質なものであるというのもまた事実である。異質と述べているのは、安く買い叩いていることではなく、買収の対象とする業界が広範囲に拡大しているという点である。