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米中貿易戦争手打ちで安心するなかれ。日米は暴落危機に向かっている

波乱は2019年上期の予感

G20の期間中、12月1日に行われた米中首脳会談を受けて、結果として関税下げの合意がなされたが、これは10月29日に本サイトでアップした拙稿『「11月にトランプ・習近平が手打ち」で世界経済・好転の可能性―欧州の方がよほど深刻な不安要素』で分析・予想した通りの展開となっている。

もちろん、世界経済においては、問題が解決の方向に向かい、拙稿に書いたように「好転する」ことはいうまでもない。しかし、欧州は英国・ドイツ・フランスなどの主要国の政治が混乱をしており、経済も悪影響を受けている。

しかし、今後、世界経済の注意する、すなわち経済危機が起こる可能性がある国は、米国と日本である。危機に向かわないことがもちろん良いが、予防する意味も含めて米国と日本が経済危機に向かう病状悪化のプロセスを解説したい。

 

米国は長期金利の急騰リスク

米国においては「金利の急騰」の可能性が高い。金利といった場合には、金融市場においては一般的に長期金利(10年物国債の利回り)を指す。一言でいうと、財政赤字の拡大等によって、米国債が値崩れをする可能性があるのである。

共和党政権、特にトランプ大統領が目指したのはレーガン大統領(1981~89年)が進めた「強いアメリカ」と、経済政策としてのレーガノミクスである。大規模な減税による経済刺激を実施したが、国防費の増加などもあって財政赤字が拡大し、膨大な経常赤字(貿易赤字)と財政赤字の「双子の赤字」が問題となっていった。

そのころの米国経済は先進国ではあったが、いわゆる成熟経済ではなかったため、インフレ率も高く、インフレを抑えるため高金利政策が採用され、ドル高がもたらされた。

その双子の赤字を背景に無理なドル高を是正するために、1985年に、そのころの先進5ヵ国の「G5」によるプラザ合意で、過度なドル高が是正された。しかし、ドル安誘導の影響で、1987年には株価が急落する「ブラックマンデー」が発生することとなった。

現在の「アメリカ・ファースト」の基本的性格と双子の赤字とドル高の組み合せが、レーガン政権の後半の経済危機のイメージと強烈にダブる。

特に筆者は財政赤字に注目している。GDP比率でみた場合、1985年マイナス5.1%、86年マイナス5.0%、87年マイナス3.2%であった。その後、米国の財政赤字は2009年にはリーマンショック対応のため、他の先進国も皆そうであったように財政政策をフルに活用したため10.8%となり10%を超えた。

その後は改善し、2017年にはマイナス3.7%となっていた。しかし、2017年末に実施された10年間で1.5兆ドルの大型減税と社会保障、国防費の増加などにより、今後、財政赤字が悪化し、対GDP比率はマイナス5%を超えると予想されている。

1950年代から、米国の財政赤字ではこのマイナス5%が1つの目安となっているが、このマイナス5%を超えてきたのは“山”でいうと2回で、景気悪化の時に財政政策の拡大を行ったためである。

今回の財政悪化は、景気が好調にもかかわらず、財政拡大を行うという極めて政治的な政策による。そのため、今後、金融政策(低金利)と同様に、景気が悪化した時の財政拡大の政策余地を狭めている。

今年の米国の経済成長率は高いとはいえ3%程度と考えられ、明らかにそれを超えるスピードで財政赤字が増加している。しかも財政赤字の拡大のカバーは、減税環境の中では米国債(財務省証券)の発行増額でしかありえない。その規模は2018年下期では前年同期比6割増となっている。

米国議会は、ひところ、財政赤字(米国債発行額)に上限を設けるという自主規制「財政の崖」を行っていたが、共和党が両院で優勢であったため、上限を上げてしまった。

しかも、国際経済においては、トランプ政権の対外政策(貿易戦争など)に見られるように、“変数”、いわゆる“リスク”が多数発生するなか、米国の失業率はほぼ49年振りの水準に落ちるなど、米国経済が好調で、中央銀行FRB(米国連邦準備制度)が2015年から金利を継続的に引き上げるために、結果としてドル高がもたされている。

ドルの総合的な評価である名目実効レートは、1985年以来ほぼ33年ぶりの高値を付けている。