「要介護の親を廃人にしたくない」なら必ず知っておきたいこと

医療・介護との向き合い方、教えます

「受診するなら名医で」「親を託すなら、いい介護職/介護施設に」……そう考える人は多いでしょう。しかし、世の中にはヤブ医者もいれば、モラルを欠いた介護職もいます。当然いい専門家に恵まれないケースもあるわけですが、せめて酷い目に遭うのは避けたいところ。あとで後悔せずにすむ「医療・介護との付き合い方」を、介護の現場を徹底取材したライターがコッソリお教えします。

(記事中の写真は、いずれもイメージです)

転倒にケガ、挙げ句、弁償を求められ…

どこの世界にも、無神経な人はいるものだ。
Yさんの介護体験を聞いたとき、私は心中で思わず、そうため息をついた。

Yさんは長年、認知症の義母の介護を担ってきた女性である。彼女の苦労は、2005年に義母がある老人ホームに入ったところから始まった。選んだホームは、入居一時金300万円、月の費用は20万円以上と高額だった。だが家の近くにあり、経営陣に医師が名を連ねていたことから、思い切って義母を預けることにしたそうだ。

Yさんは、真新しいホームに入った義母が職員の笑顔に囲まれ、サポートしてもらいながら楽しく暮らしている光景を想像していた。ところが、現実は想像と大違い。ホームで行われていたケアの内容はお粗末で、すぐに不手際が見えはじめる。

あるときはホームから、義母が転んで額を切り2針縫った、という報告があった。夜中に義母が居室を出て歩いていたので、職員が手を引いて部屋に連れ戻そうとしたところ、義母がしきりに払いのける動作をくり返したそうだ。そのはずみでバランスを崩し、転倒したのだという。

またあるときは、「排泄物を壁になすりつけるので困る。クリーニング代を払ってほしい」とホームから請求が来たこともある。しかし、これには事情があった。

当時、義母はオムツを使っていたが、排便すると重みでオムツが膝あたりまで垂れ下がる。垂れ下がったままでは不快だから、便を取り除こうとする。その便が手について取れないが、認知症のため、どうしていいかわからない。そこで困って、壁にこすりつけて落とそうとしたのだった。

「義母を見ていると、排便したいときの様子はわかるんです。特に食後はそう。でも言葉で伝えられないので放っておかれる。それがわかっていたので、私は『食後にトイレに連れていってもらえたら、そんなことはしない』で通して支払いませんでした。

ほかにも、必要な薬の飲ませ忘れがあったりと、基本的なことがおろそかにされていたんです。信じられないでしょう」

その一方で、スタッフが何事も手早く済まそうと、本人ができることまでサポートしてしまう。確かに、食事や歯みがきといった日常の行為はスタッフが介助すれば早く済む。だが、やることがなくなった義母はかえって衰え、身の回りのことが徐々にできなくなっていく。次第に太り、足腰が弱って、話しかけても反応が鈍くなっていった。

【写真】足腰が弱り、反応も鈍くなった
  足腰が弱り、話しかけても反応が鈍くなってしまった photo by gettyimages