知らないと後悔!親を介護施設に託す人が必ず直面する「2つの壁」

問題はお金でもサービス内容でもない
上村 悦子 プロフィール

ミキサー食になってしまった夫に、食を楽しんでもらうには

だが、こんないい施設にも制限はある。Hさんが気にかかっていたのは、夫が施設で好きなものを食べさせてもらえないことだった。夫は、歯こそ丈夫だったが認知症で言葉が出なくなっており、飲み込む力(嚥下力)が落ちていた。このため、施設では普通食を提供してもらえなくなっていたのだ。

嚥下力が落ちると気管に食べ物が誤って入りやすくなる。これを誤嚥というが、誤嚥は窒息や肺炎など、高齢者の命取りになるトラブルのもとなのだ。だから、施設側はリスクを恐れて、誤嚥しにくいものを提供するようになる。夫の施設での食事は、いつの間にか刻み食に変わり、やがてミキサー食になっていった。

「施設では誤嚥がすごく怖がられる。『夫は自分の歯があるんだから、噛んで食べさせたい』と何度か申し出ましたが、だめでした」

そこで訪問の日、Hさんは自分でお弁当を持参するようにした。昼食の時間には一緒に食事をするのだが、ミキサー食の夫にこっそり、唐揚げを差し出した。好物のまんじゅうやピーナツを与えたこともあるが、

「ほとんどのものが食べられました」

とHさん。夫も上機嫌でほおばったそうだ。ほかにも、天気がよければ車イスで施設裏手の山へ出て、持参したお弁当を一緒に食べて散歩を楽しんだ。運転のできる娘が面会に同行してくれるときには、夫を車で連れ出し、大好きなハンバーガーショップへ行くこともあったという。

【写真】天気のよい日は裏手の山へ出かけた
  天気がよければ車イスで施設裏手の山へ出かけた photo by gettyimages

Hさんの事例から私は、「2つの壁」を乗り越えるためのこんなヒントが見いだせたと思っている。

(1)施設を自分で見て、職員と話して施設を選ぶのが大切なようだ。ここに引用したHさんの発言の端々から、彼女が施設をよく観察していることがわかるだろう。おなじカテゴリーに分類されている施設だからといって、同じようなサービスが提供されているとは限らない。最後に頼りになるのは、自分の目と肌感覚だ。

(2)お年寄りを施設に預けっぱなしにせず、頻繁に会いに行き外に連れ出すのも大切らしい。施設で自由が減ってしまうなら、ときには家族が外に連れ出すなどして「自由時間」を設けてはどうだろう。施設ができないことを家族が補えば、「帰りたい」もなくなるのではないか。

  本記事でとりあげた書籍はこちら 

あなたが介護で後悔する35のこと
そして、後悔しないための8つの心得

【書影】

上村 悦子 著

 書籍詳細はこちら 

 Amazonはこちら 

家で看ても施設に預けても、兄弟姉妹・親類縁者と仲が良くても悪くても、終の棲家がどこであろうと、悔いなく終わった介護はひとつとしてない。でも、後悔は必ず減らせます。 介護の“先輩”たちの体験を徹底取材。迷ったとき「どうすればいいか」がわかる本です!