男子高校生にとって、Queenは「憧れのロックスター」だったか

ツェッペリンやストーンズとは違って…
堀井 憲一郎 プロフィール

男性ファンは肩身が狭かった?

日本で大人気だったクイーンは、いちど、日本語の歌詞の歌を出したことがある。

それを最初に聞いた不思議な感じを覚えている。
 
発売年を見ると1977年の5月だから、予備校に通って真面目に勉強していたころだろう。夕刻に家に帰って、何だか眠くて少し横になっいた。寝る時間ではないのに、横になってまどろんでいたときである。ラジオからクイーンの曲が流れてきて、途中でフレディ・マーキュリーが日本語で歌っているように聞こえたのだ。

夢ともなくうつつともなく、ぼんやり聞いていたので、それが本当のこととはおもえず、クイーンが日本語で歌う変な夢を見ちゃったなとおもった。イギリスのミュージシャンが日本語で歌うわけない、と信じていたからだ。

そのあと、寝ぼけた聞き違いではなく、クイーンが本当に日本語で歌っていたと知って、驚いた。「手をとりあって」という曲である。世界的に人気のグループがそういうことをやるのはすごいとおもったけれど、でもやはり「女子に人気のアイドルグループ」らしいともおもった。

 

フレディ・マーキュリーにすれば日本人みんなに向けたメッセージだったんだろうけれど、こっちは女性のアイドルだとおもっているから、これも女性向けのメッセージなんだろうなとおもったのだ。

本当に日本語で歌ってると知ったとき最初におもったのは、クイーン好きのあの同級生女子は喜んでるんだろうな、というものである。自分に向けられてるとおもわないので、驚いたが、嬉しいというものではなかった。

男性のクイーンファンも少数ながらいたのだけれど、彼らとべつだんクイーンの話はしなかった。かなり肩身の狭いおもいをしていたとおもう。

それでも楽曲は刺さっていた

メンバーの名前も知らない。さすがにフレディ・マーキュリーの名前はわかるが、残りの3人の名前は知らなかった。

いまでも言えない。

ただ、そのころ、ボーカルではなくて、別の誰かがかっこいいという話を女子がしていた記憶がかすかにある。おそらくドラムのロジャー・テイラーのことだったのだとおもう。

なぜ、ここまできれいにクイーンを避けていたのかは、よくわからない。そもそも「曲はほとんど知っているのに、クイーンについては何も知らなかった」という事実も、今年、映画『ボヘミアン・ラプソディ』を見てやっと気がついたくらいである。

やはり1970年代当時から、少し特異なグループだったということだろう。

フレディ・マーキュリーが、何だかずっと不思議であった。特に髪を短くしてゲイぽいキャラになってからは、よくわからなかった。少なくとも若い男子が、ああいうふうになりたいとおもう「憧れのロックミュージシャン」ではなかった。

いまあらためて見ると、まだ長髪だったころ、1970年代のロックミュージシャンらしいフレディには、えもいわれぬ色気がある。女性の感覚でいえば「かわいい」と言うしかない魅力だ。

1975年、日本を訪れたクイーン。フレディ(手前)はまだ長髪だ〔PHOTO〕Gettyimages

彼の歌唱を見ていると、発声しようとするときのタメというかごくわずかな間合いがあって、そこに「がんばる」という意気込みが少しあり、ためらいと自負が垣間見えて、いまの私は、その若さに惹かれてしまう。若いころだと絶対に気がつかないポイントだ。そういう魅力をわかれって言われても、男子高校生には無理である。

そして彼らの楽曲はやはり美しい。

耳に残る。

あまり真剣に聞かなかったくせに、だいたいのヒット曲は覚えている、

やはり彼らの楽曲が強く刺さってくるものだからだろう。