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米中「アルゼンチン決戦」勝ったのは習近平か、トランプか

中国は瀬戸際まで追い込まれていたが…

中国経済の運命を決する重要会談

言ってみれば、アメリカが繰り出すボディブローにふらついてノックアウト寸前だった中国が、何とかクリンチで逃れてゴングが鳴ったようなものだった。

現地時間の12月1日夕方5時半、G20を終えたばかりのトランプ大統領と習近平主席は、1年1ヵ月ぶりとなる米中首脳会談を開いた。

思えば昨年11月、習近平主席が故宮を貸し切りにしてトランプ大統領を歓待し、「国賓以上の待遇」を演出。2535億ドルに及ぶ覚書を交わしたトランプ大統領は、「習主席とはケミストリーが合う」とご機嫌だったものだ。

こうした米中協調の2017年から一転して、2018年は貿易戦争などで「米中新冷戦」とまで言われるほど関係が悪化した。世界ナンバー1とナンバー2の大国の角逐はどうなるのか――世界中が注視した米中首脳会談だった。

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ディナーを交えた米中首脳会談は、現地時間の午後8時頃に終了し、トランプ大統領は足早に大統領専用機「エアフォースワン」に乗り込んだ。王毅国務委員兼外相が、中国に都合のよい部分だけをブリーフィングしたが、ほどなくホワイトハウスが、会談の概要をホームページにアップした。その全文は、以下の通りだった。

〈 アメリカ大統領のドナルド・トランプと、中国の習近平主席は、先ほど、双方が言う「高度に成功した会談」を終えた。両首脳と最高首脳の代表者たちが、アルゼンチンのブエノスアイレスで行ったものだ。

大変重要なことは、習主席が、人間性溢れる素晴らしいジェスチャーで、フェンタニル(通称「チャイナホワイト」)を管理物質に指定することに合意したことだ。その意味するところは、フェンタニルをアメリカに販売する(中国)人は、中国で法的に厳罰に処せられるということだ。

貿易については、トランプ大統領が2019年1月1日、2000億ドル分の製品に、現在かけている追加関税10%を据え置き、25%には引き上げないことに合意した。中国は、具体的にはまだ合意に至っていないが、非常に多くの農業、エネルギー、工業製品、もしくはその他の製品をアメリカから購入し、両国間の貿易不均衡の是正に努めることに合意した。中国は、われわれの農家から直ちに、農産物を買い始めることに合意した。

トランプ大統領と習主席は、直ちに構造改革の交渉を始めることでも合意した。それらは、強制的な技術移転、知的財産権の保護、非関税障壁、サイバーの侵入と窃盗、サービスや農業分野などだ。双方は、これらの交渉が90日以内に完了するよう努力することに同意する。もしもこの期限が来ても合意に達しない場合は、10%の追加関税を25%に引き上げる。

また、北朝鮮に関しても、大きな進展があった。トランプ大統領と習主席はともに、金正恩委員長も交えて核のない朝鮮半島を見るよう努力することでも合意した。トランプ大統領は、金委員長への友情と敬意を表明した。

習主席はまた、以前に承認されなかったクアルコムによる(オランダの)MXPセミコンダクターズ買収の計画を、再度承認することは可能だと述べた。

トランプ大統領は述べた。「これは米中の無限の可能性を示す驚くべき、かつ生産的な会談だった。習主席とともに進めていくことは、大きな栄誉だ」 〉

以上である。

 

まずアメリカにとって最重要だったのは、中国との貿易戦争よりもフェンタニル問題だったのだ。「アメリカ版アヘン」と呼ばれる薬物である。19世紀半ばには、イギリスが中国にアヘンを蔓延させてアヘン戦争になったが、中国から輸入されるフェンタニルにストップをかけようということだ。

次に、世界中が注視した貿易戦争に関しては、中国側は今回のG20を「止血の旅」と捉えており、とにかく応急処置で「止血」することに奔走した。「止血」とは、9月24日からアメリカが始めた追加関税措置第3弾の2000億ドル分に関して、現行の10%から、来たる1月1日より25%に引き上げるのを喰い止めることである。

仮に1月から、25%に引き上げられたらどうなるか。中国からアメリカへの輸出が激減し、「中国経済の毛細血管」と呼ばれる全国の中小零細企業が、総崩れになる。同時に、中国及び外資系企業は、ますます中国から撤退し、ベトナムを始めとする東南アジアなどに製造工場を移転させる、もしくは一部の作業工程を移転させる。

結果、2月5日の春節(旧正月)を前に、中国企業は従業員にボーナスが払えず、解雇や離職が続出する。株価は暴落し、人民元は急落。不動産価格が暴落し、「中国発のリーマンショック」へとまっしぐらに突き進んでいく……。

こうした現象を中国では密かに「1月危機」と呼び、極度に恐れていた。そして「1月危機」を回避できるかどうかは、ひとえにトランプ大統領と習近平主席との「大一番」にかかっていたのである。いわば中国経済の運命を決する重要会談だ。

会談の結果、何とか1月1日の「発動」は喰い止めた。ただし、「90日以内に解決」とアメリカに突きつけられた。12月の1ヵ月を考えると、実質上は2ヵ月の「執行猶予」が付いただけのことだ。

それでも、「何とか年は越せる」(春節を終えることができる)。14億中国人にとって最も大切な春節の大型連休が、経済危機で台無しになれば、中国政府が最も恐れる「大規模暴動」につながるリスクがあるからだ。