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日産ゴーン事件があぶり出した「世界自動車戦争」の意外な行方

最後は日本勢が勝つ予感

国家産業としての自動車製造業

ゴーン事件は、日本中の話題をさらい、陰謀説、クーデター説、日仏政府の権力争いなど色々な風説が飛び交っている。

もちろんその中には真実をついている話も多いように思われるが、忘れてならないのは、今回の事件、が単純に「日産V.S.ルノー」とか、「日仏政府の確執」などという次元を超えた、「世界自動車戦争」の氷山の一角であるということである。

例えば、トランプ大統領の産業政策にもおいても「貿易戦争」がクローズアップされる。トヨタのメキシコ新工場の建設に物言いをつけたりしながら日本の自動差産業にも圧力をかけているのだ。もちろん、日米貿易赤字の主たる要因としての自動車輸出にも釘を刺している。

トランプ氏が圧力をかけるのは日本の自動車メーカーだけではない。メキシコやカナダにもNAFTA(北米自由貿易協定)の再交渉の過程で、以下の条件を飲ませた。

1)関税撤廃の恩恵を受けられる条件を定めた「原産地規則」を、域内の部材調達比率を62.5%から75%以上に引き上げる。
2)部材の40~45%は時給16ドル(円換算で日本の最低賃金の約2倍)以上の地域でつくるよう求める「賃金条項」を導入する(賃金の安いメキシコメーカーが大きな打撃を受ける)。
3)米国はメキシコに対し、高関税を課す条件となる数量規制を取り入れた他、通貨安誘導を防ぐための為替条項も盛り込んだ。

自動車産業は、極めて裾野の広い産業であり、一国の雇用にも大きな影響を与える。

自動車の部品を作っているのは、デンソーやドイツのロバート・ボッシュ(日本法人の名称はボッシュ)のような大手メーカーだけではない。

シートの製作には多くの繊維メーカーが関わっているし、炭素繊維などの先端的部品には東レなどが力を入れている。

また、電気自動車でなくても、最近の自動車にはパワー・ステアリング、パワー・ウィンドウなどのモーターが多用されるため、日本電産は車載用モーターに注力し始めた。

その他、電気部品をつなぐコード類などを含めて、1台の自動車にはおおよそ3万点の部品が使用される。その波及効果は驚くべきもので、例えば会社四季報の中から、自動車関連部品を全く扱っていないメーカーを探すのは、結構難しい作業である。

以下、世界中の政府が多かれ少なかれ関わっている「世界自動車戦争」について論じたい。

 

必死なのは日本やフランスだけではない

自動車産業や雇用を守るために必死なのは、別に日仏政府やトランプ大統領だけではない。

過去の米国も必死に3大メーカーを守ってきており、1980年代には「日本車たたき」を中心とした「ジャパン・バッシング」を政府ぐるみで行った。米国消費者にとって燃費・品質にすぐれ低価格の日本車は「大歓迎」であったが、3大メーカーの敵は米国の敵というわけである。

もちろん、米国の言い分は理不尽であったが、賢い日本のメーカーは優良顧客である米国との正面衝突を避け、現地米国で生産し、米国の攻撃を和らげるという賢い選択を行った。

日本車の性能がすぐれているということもあるが、現在、米国でトヨタをはじめとする日本メーカーが確固たる地位を築いているのも、この時の正しい判断によるところが大きい。

また、オバマ政権は、リーマンショック後の2009年、米連邦破産法11条を申請したGMを国有化した(2013年に国有化を解消している)。3大メーカーが落ちぶれてきているとはいえ、自動車産業がどれほど米国にとって重要なのかが分かる。

もちろん、先進国だけではない。マレーシアの国産自動車メーカー・プロトンは、今ゴーン関連企業として話題の三菱自動車の協力を得て産声をあげた。その後、英国のスポーツカー・メーカーのロータスを傘下に収める。2017年には共産主義中国の吉利汽車が49.9%の株式を取得したが、中国と距離を置くマハティール首相が復帰したことで、大きな動きがあるかもしれない。

また、東欧や旧ソ連邦諸国では意外にポピュラーなラーダは、ロシア製である。