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LINEの銀行業参入が、下り坂の日本に突きつける「重い課題」

論理的には必然の流れだが…

「LINE Bank設立」と2年前の「予想」

日付を確かめてみる。

最初の版は2016年11月19日、最終版は2017年5月29日。つまり約2年前に書いた論考だ。なぜそんなファイルを探したかというと、LINEとみずほフィナンシャルグループが11月27日、両傘下のLINE Financialとみずほ銀行が共同で「LINE Bank設立準備株式会社」を設立することで合意したと発表したからだ。「ああ、予想通りのことが起こったか」と思い「そのファイル」のことを思い出したのだ。

 

以下、実際に私が2017年5月29日に書いたファイルを一言一句変更せずに転載する。今読むと「やや古いな」と感じる部分もあるが敢えて修正しない。

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2015年に英国の経済専門新聞『The Economist』紙の姉妹企業、Economist Intelligence Unit(EIU)が実施した調査のリポートによれば、銀行業界がもっとも恐れているのは、PayPalなどの支払いプラットフォームより、米Apple, Amazon, Googleのような巨大IT企業だそうだ。

まずはGoogleがどんな企業かを思い出してみよう。

1998年にスタンフォード大学の学生だったラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンがGoogleを立ち上げた頃、ウェブの世界は混乱していた。1991年にインターネット上にウェブが出現してから7年。ウェブページはねずみ算的に増殖し、どのページに必要な情報が書いてあるか、誰も把握できなくなっていた。アダルトサイトはありとあらゆるキーワードをウェブページの下のほうに貼り付けることで、キーワード検索をするすべての人におのれのページを閲覧させようと画策し、こうしたスパムサイトを検索結果から排除しようとするプログラマーたちと果てることのない戦いを続けていた。

そんなときにペイジとブリンは「ページランク」という概念を着想したのだ。ページランクのアイデアはとてもシンプルで、「多くのウェブページが参照しているウェブページは重要であり、重要なウェブページによって参照されているウェブページは中でも重要である」ということを、線形代数の固有ベクトルの計算で表現したものだ。キーワードを含むページをページランクの高い順に表示することで、スパムページが表示されないようにしたのである。

Google設立者のラリー・ペイジ(左)とセルゲイ・ブリン(Photo by gettyimages)

Googleの出現によって私たちのネット生活は圧倒的に便利でスムーズになった。彼らが検索エンジンを導入してから3年もたたないうちに、アメリカではGoogle以前にどんな検索エンジンがあったか誰も思い出せないほどになった(日本は例外的にYahoo!検索がしぶとく生き残ったが)。

では、そのGoogleが銀行業界にどんな風に殴り込みをかけ得るかについて、具体的に検討してみよう。そう、極めて具体的に。

Googleが銀行業に乗り出す日

ページランクと同様の考え方は、様々な業種に浸透している。たとえば、論文の重要度を引用関係から算出するインパクトファクターもそのひとつだ。では、ウェブページや論文の代わりに「人間」をランキングするにはどんな情報が必要だろうか。

Googleには15GBの無料ストレージつきのウェブメールサービスGmailがある。月間アクティブユーザ数は10億人を超える。私もその一人だ。Gmailは企業のドメインのアカウントも提供しているので、ベンチャー企業の中には社内メールは使わずにすべてGmailで済ませているところも少なくない。

Gmailは私が誰とメールのやり取りをしているかすべて把握している。こうしたやりとりを「ウェブページの参照」あるいは「論文の引用」と看做すとどんなことがわかるだろうか。社会的信用の極めて高い人物ならば、彼と頻繁にメールをやり取りしている私の社会的信用もそれなりに上がる。なぜなら、私は、彼という「ソーシャルキャピタル」を有しているからだ。