EU離脱交渉ついに決着…「最悪のシナリオは回避」と考える理由

決裂寸前から急展開だったが…
笠原 敏彦 プロフィール

市場の脅威が政策の変更を迫る

ここからは、単なる推測だと断った上で、話を進めたい。

議会が合意案を否決した場合、なにが起こるか。

確実なことは、イギリス、ヨーロッパを中心に株式、為替市場が混乱するということだ。

その場合、合意案に反対票を投じた議員らはどう反応するだろうか。

仮に2度目の投票が実施された場合、市場の混乱を前に、「否決こそが国益だ」と有権者に向かって言い切れる肝の据わった議員はどれぐらいいるかと言うことだ。

市場の脅威が政策の変更を迫るというのは近年、世界的な傾向である。

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「合意なき離脱」は避けられる?

少々想像の世界に入り込み過ぎたが、今後の展望では、12月11日の採決で否決されることを織り込んでその後の「プランB」に関心が移っているようだ。

一度は否決しないと反対派は矛を収められないというムードがあるのかもしれない。

その先の想定されるシナリオは、読者のみなさんも報道で周知の通りである。

簡潔にまとめると、以下のようなケースだろう。

来年3月29の離脱日を延期する、もしくはEUへの離脱通告を一端取り下げるなどして時間的猶予を確保した上で、①EUと再交渉を行う②解散総選挙を実施して体制を整え直す③国民投票を再び行う、というものだ。

筆者には、再交渉以外は現実味が薄いように思えるが、肝心な点は、以上のどのシナリオも無秩序離脱を前提にしたものではないということである。

議会での否決=無秩序離脱ではないということだ。

 

この点に関しては、コービン労働党党首が「合意なき離脱は避ける」と明言しているように、議会には与野党を越えた最大公約数として無秩序離脱だけは回避するという暗黙のコンセンサスが存在しているように見える。

EU側も、離脱交渉の最終局面で見せた柔軟性を見る限り、イギリス側が求めれば、無秩序離脱を避ける手続きには前向きに応じることだろう。

以上が、「合意なき離脱」という最悪のシナリオを避ける展望は十分に開けていると筆者が見ている理由である。