賃貸マンションは「大家を儲けさせる」ために存在している

チープな借家住まいで満足できますか?
沖 有人 プロフィール

「プロパンガス物件」の闇

都内ではあまり聞かないが、賃貸住宅では郊外に行くとプロパンガス(LP)を使っているケースが多い。というのも都市ガスを引いてくるためには、ガス管の敷設費用を建築主が負担しなければならないからだ。

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建物の眼の前までガス管が来ていればまだしも、遠いところから引いてくるとなるとコストが高くつく。そのためタンクを置くだけでよく敷設費用がかからないプロパンガスで済ませてしまう。電気は必ず引いてこなければならないが、ガスは必ずしもそうではない。

LPの場合、消費量あたりの単価は都市ガスより3~4割も高い。しかし高くてもそれは借り手の負担であって、家主の懐は傷まない。その上、地域によってはプロパンガスとすることで、家主はLP業者からのキックバックまでもらえることがある。

キックバックされた金額はもちろん入居者が使うガス代に上乗せされる。入居者はそんな裏の事情も知らないまま、家主へのキックバック分まで自分たちが払っているのだ。

こうした賃貸住宅のダークサイドは時おり社会問題になりかけるのだが、結局はいつもうやむやになってしまう。

結局、買い手本人ではなく他人が住む家だから、「目に見えないところはできるだけ安く済ませたい」というインセンティブが働くのだ。

設備や構造に投資して充実させたとしても、家賃には地域による面積あたりの相場があって、それを大きく超える物件には借り手がつかなくなってしまう。家主にしてみれば、投資するだけ損ということだ。

こうやって建てられる賃貸住宅は、終の棲家となるようなものではない。

入居する側も「仮の住まい」という意識があるため、住居費を節約しようとして家賃にばかり目がいきがちになる。「どうせ寝に帰るだけだから」と妥協した結果、構造強度は低く、面積は狭く、立地は悪く、設備は省かれ、日当たりもよくない物件に住む、といったことになっている人が少なくない。

 

そんな住環境で「豊かな心を持て」と言われても難しいだろう。

賃貸用と分譲用のマンションは、基本的な構造からして違う。

賃貸に多い木造建築の法定耐用年数は22年、軽量鉄骨造は19年もしくは27年、重量鉄骨でも34年だ。

しかし分譲マンションは基本的にRC(鉄筋コンクリート造)で、耐用年数は47年と長い。それだけ頑丈にできている。最近の分譲マンションの多くは、その上に免震または制震機能が付加されている。

法定耐用年数とは税制上の償却期間である。だが現実にはそれが金融機関の融資の条件や売却時の資産査定の根拠となっている。

仮にマンションの資産価値が47年でゼロになるとしても、年平均では2%強。建物以外に土地の持ち分の価値もあるので、物件価格の下がり方はそれより低い。

実際に中古物件の市場価格を築年数ごとに調査してみても、都区内であれば分譲マンションの価格は年に2%程度しか下がっていない。

分譲マンションは専有部分の設備も賃貸とは大きく違う。

分譲マンションの多くは建物本体に高い断熱性、気密性を持たせており、これが室内の快適性につながり、ヒートショックの防止にも役立っている。快適設備である床暖房も標準仕様だ。

水まわりは住居選びの大きなポイントなので、全自動バス、ウォシュレットなどは分譲の場合は必須の設備だ。風呂場にミストサウナがつけられることもあるし、最近はスニーカーやおむつまで洗える大型の流し、スロップシンクもよく見かける。

都内には水と空気にこだわる人が多いので、オプションでキッチンに浄水器を備えつけたり、24時間換気設備を高級仕様としたり、設置するエアコンに空気清浄機能のついたグレードを選ぶことができることも常識になっている。自分好みの機種に変更することももちろん自由だ。