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日本人は知らない…韓国がいま「働き方改革」でトラブル続出中のワケ

「夕方のある暮らし」のせいで収入激減
金 明中 プロフィール

深刻すぎる若者たちの「就職難」

韓国政府が残業の上限規制を行ったもう一つの理由は、若者を中心とする就職難を解決するためだ。

韓国では労働需給のミスマッチと雇用創出の不振で若者の雇用状況が改善されておらず、2017年時点の若者(20~29歳)の失業率は9.8%に達している。平均失業率3.7%に比べると約2.6倍も高い水準だ。韓国政府は労働時間を短縮することによって、その分新たな雇用が創出されると期待し、「週52時間勤務制」を思い切って実施した。

では、なぜ韓国では若者の労働需給のミスマッチが発生し、若者の失業率が高いだろうか。

その理由としては、大学進学率が高いことと大企業と中小企業の処遇水準に大きな格差が発生していること、そして就業浪人が多いことなどが挙げられる。

〔photo〕gettyimages

韓国における大学進学率は2017年現在68.9%で日本の54.8%(2017年度)を大きく上回っている。つまり、日本は卒業後に専門学校(16.2%)と大学(54.8%)に分かれて進学していることに比べて、韓国は専門学校が少ないことなどが理由で大学進学率が高く、卒業後にミスマッチが発生している。

韓国では大企業と中小企業の間に処遇水準が大きく異なるので、若者は就職浪人をしてまで大企業に就職しようとしている(韓国では応募者の能力を重視しているので、日本のように就職市場で新卒者が既卒者より有利になっていない)。

 

このように大企業と中小企業の間に処遇水準が大きく異なる理由としては、韓国経済が大企業に大きく依存している点が挙げられる。

例えば、韓国の関税庁が発表した「2017年企業貿易活動統計」によると、輸出の中で大企業が占める割合は66.3%で、中小企業の17.6%と中堅企業の16.0%を大きく上回った。全企業に占める割合が0.9%に過ぎない大企業が韓国の輸出の7割弱を占めているのだ。

また、文在寅大統領は、大統領選挙の際に2016年時点で6,030ウォン(約603円)である最低賃金(時給)を、2020年までに1万ウォン(約1000円)まで引き上げることを公約として発表した。文在寅大統領が最低賃金の目標値を1万ウォン(約1000円)に設定した理由は、韓国における最低賃金の水準が一般労働者の賃金の35.7%に過ぎず、OECD平均50%を大きく下回っていたので、最低賃金を1万ウォン(約1000円)まで引き上げて、OECD平均に合わせるためだ。

但し、その実現のためには2020年までに毎年16%以上最低賃金を引き上げる必要があり、今回の引き上げ率10.9%では2020年までに最低賃金1万ウォンを達成することは難しい。これに関連して文在寅大統領は7月16日に2020年までに最低賃金を1万円(約1000円)まで引き上げる公約は守ることができなくなったと謝罪した。

「夕方のある暮らし」のせいで賃金が減った人たち

「週52時間勤務制」の実施は、労働者の「夕方のある暮らし」を可能にするものの、その代わりに労働者の賃金総額は減ることになる。特に、基本給が低く設定されており、残業により生活水準を維持する製造業で働く労働者が受ける影響は大きいだろう。

国会予算政策処は今年の3月13日に「延長勤労時間の制限が賃金及び雇用に及ぼす効果」を発表し、「週52時間勤務制」が適用され、労働者の残業時間が減少すると、1ヶ月の給料は平均37.7万ウォン減少すると推計した。雇用形態別には非正規職の減少額が40.3万ウォンと正規職の37.3万ウォンを上回った。