スクープ!異例入国の北朝鮮幹部が極秘接触した「元政治家の証言」

日体大理事長が訪朝し続ける理由
常井 健一 プロフィール

金大臣と話したこと

――今年に入り、北朝鮮は周辺諸国との関係を改善しようと動いておりますが、10月の訪朝中、向こうの態度に「変化」を感じた瞬間はありましたか。

サッカーの親善試合後、日朝両チームの選手たちが一緒に手を握って、スタジアムを一周回るという場面があったのですが、3万人の観衆から万雷の握手を受けました。なかなか感動的でしたよ。

日体大が訪問団を派遣するのは、2012年、2013年、2015年に続き、4度目なんですが、これまでは試合後、日体大の選手たちが自主的にスタジアムを一周回って、スタンドに向かって御礼の挨拶していました。それが、今年からは向こうの提案で、両チームそろってやることになりました。

日体大と朝鮮体育大学の試合後の様子

――試合の日、金大臣とはどんなことを話したのでしょうか。

試合前にスタジアムの貴賓室で30分ほど通訳を介して話しました。私からは、2020年の東京オリンピックに、朝鮮が代表選手団を派遣する場合、気持ちよく来日できるよう日体大が便宜を図りたいということを提案しました。具体的には、あらゆる練習場と練習パートナーを用意する準備があるということをはっきり申し上げました。その時点では、具体的な返事はありませんでしたが。

朝鮮の女子サッカーチームは、南北統一チームを組まなくても、オリンピックに出られる可能性があるでしょう。日体大の現役学生の中には、代表選手が一人います。それから、体操、柔道、重量挙げ、レスリングは金メダリストが出てもおかしくないレベルです。

日体大というのは、今までのオリンピックで日本が獲得したメダルの「3分の1」を現役学生やOBが獲得しているんですよ。今回の東京オリンピックには、70人ほどが出場する予定です。日体大関係者だけで10個の金メダルを狙っています。

つまり、国内最先端を誇る日体大の施設であれば、一国の代表団を受け入れても十分に対応できる。練習の施設だけでなく、何カ月も前から来て準備するならば、大学のゲストハウスを提供することも考えています。

 

――しかし、日体大がなぜそのような提案したのでしょうか。

事前キャンプ地として朝鮮を受け入れようと手を挙げる自治体は、おそらく出てこないでしょう。日本人の猜疑心は強いから、「選手たちがスパイ活動するのでは?」「情報を入手するのにあちこち人に会うのでは?」というような思いを持って疑ってかかる。異常なほどの警備を施して、かえって両国の関係がぎくしゃくしてしまうのは残念ですから。

日体大の建学の精神は、「體育富強之基(たいいくふきょうのもとい)」なんです。国民の健康、体力強化を推進すること。オリンピックムーブメントの普及、定着、そしてスポーツを基軸に国際貢献する。

うちの大学は私学とはいえ特殊な成り立ちの大学で、戦前は軍事教育の総本山でした。軍人養成、とりわけ特攻隊員を養成も担っていた。学徒動員の数も多かった。その反省を踏まえて、逆に平和構築のために貢献する大学でなければならない。スポーツにはそういう要素があると感じてやっているわけですよ。

世界の国々と等しく付き合うのは、スポーツの原則。だから、お世話させていただく。それは光栄なことだと思っています。

――今回、金大臣が「お忍び」で日体大を訪問する予定でした。土壇場で中止となりましたが、その経緯について教えてください。

われわれから体育大臣に、来日時にわが大学への訪問を要請しました。しかし、朝鮮総連のスポーツ担当からは「99%、不可能だ」と断られました。体育大臣の一挙手一投足は、向こうに報告しなければならない。だから難しい、と。それでも、もう1回、プッシュしてみました。こんどは朝鮮総連の中でも、国際局長を通しました。

それだと北朝鮮の外務省に直に伝わる。その結果、来日1週間前に訪問する予定が決まりました。4回も学生を平壌に連れて行っている実績もありますから、誠意が伝わったのでしょう。

もちろん、「国のトップ」も了解済みで、わが校訪問が決まったと思います。