「メンドンとボゼ」世界が認めた謎多き「来訪神」の正体はなにか

ある生き物が関係している、という仮説
青山 潤三 プロフィール

失われゆく「古層の感性」

地元の人が用いるクロイワツクツクの呼び名には、2つの系統があります。ひとつは「メツメン」(およびそれに類似するバリエーション)。もうひとつは「ガーク」(同)です。

「メツメン系」も「ガーク系」も、それぞれ独特の鳴き声に由来しているようです。

クロイワツクツクの鳴き声を強いて文字にすれば、「ゲーイ、ジュルジュルジュル、ゲイ!!」の繰り返し、という風になるでしょう。

「ガーク」系の呼び名は、わかりやすい鳴き声の音写です。ただ、イントネーションとしては(1音節の末尾の「ゲイ!!」と、次の音節の頭の「ゲーイ」の連接の部分が)、どことなく「メツメン」のイメージで聞こえるのです。

 

こうした呼び名の差は、地域ごとに違うというよりも、たぶん人によって違っているのだと思います。ただし近年では現地でも「正式和名はクロイワツクツク」という認識が広まっているようで、島の子供たちに声の主を尋ねると、大抵「クロイワツクツク」と答えが返ってきます。

メンドン(三島村教育委員会提供)

話は少し逸れるようですが、屋久島の南岸に「ハロー」という集落があり、筆者はしばらくの間そこに住んでいたことがありました。

その集落の背後には「モッチョム岳」という険しい山が聳えています。あるとき地元の方が、このようなことを言うのを聞きました。

「『ハロー』も『モッチョム岳』も間違いである、地図や教科書には『原(ハラ)』『本富(モトトミ)岳』と記されている。これが日本語としての正しい読み方であり、間違った読み方を続けていると恥ずかしいから、正していかねばならない」。

筆者には、地元の方々にさえこうした考え方が広がってゆくことが、とても残念に思えてなりません。