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「婚外子に財産を遺したい夫」vs「遺したくない妻」の壮絶バトル

新・争族の現場から④

私たちに持ち込まれる相続相談の中でも最も多いものが「妻以外の女性」がからむケースです。女性に財産を渡したい夫から相談もあれば、女性に財産が渡らないようにする方法を教えて欲しいという妻からの相談もあります。

今回はそんな話の中でもかなり「ドロドロ」度の高いケースを紹介したいと思います。

 

不倫の末に妊娠

山田さんは、中部地方のある都市に住む40代半ばの男性で、地元の有名ホテルに勤めるホテルマンです。家族は奥様と子供1人。奥様も近所で有名な美人で、家族三人、平穏に暮らしていました。

しかしそれはあくまで表面上のこと。山田さんには、妻子には内緒のある秘密を抱えていました。それは「隠し子」です。

山田さんは40才の時から20才の女性との不適切な関係を続けており、女性との間に子供をひとりもうけていたのです。

山田さんが彼女と出会った当初、彼女はまだ大学生でした。たまたま訪れた居酒屋で、隣に座ったことで会話が始まりました。20歳以上の歳の差がありましたが、不思議と意気投合した二人は、まもなく交際するようになったのです。

彼女は交際が始まった当初から山田さんが既婚者ということを知ってはいました。しかし、20歳そこそこの彼女は不倫の重さを認識することはありません。むしろ、「テレビのドラマでやっているようなことを私もやっている」と、舞い上がっていたと言ったほうがいいでしょう。

しかし、交際期間が長くなるにつれ、彼女の気持ちに変化が現れます。山田さんのことを好きになるのと裏腹に、既婚者との恋愛に辛さを感じはじめたのです。不倫の二人は、会いたいときに会う、電話したいときに電話する、という普通のカップルなら当たり前のことができません。

最初の頃はそれも含めてドラマのヒロイン気分を楽しんでいた彼女でしたが、徐々に不満が勝るようになり、山田さんと口論になることも増えていきました。

山田さんも、彼女に我慢をさせていることの罪の意識から、可能な限り彼女と会う時間を作りました。そんな山田さんの態度に愛を感じる彼女でしたが、山田さんへの愛が深まれば深まるほど、会えない時が辛くなるのですから、恋愛は複雑です。

こうして付き合い始めて4年が経過した時、ある出来事が起きました。

2人の間に子供ができたのです。

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離婚をするつもりはない山田さんは、中絶を望みますが、彼女は納得しません。それは、愛する山田さんの子供が欲しいという気持ちもあるでしょうが、それだけではありません。

実は、彼女の妊娠は今回が初めてではないからです。二人が付き合って2年が経過したころ、一度彼女は妊娠しています。当時はまだ学生でしたから彼女も生むことは難しいことを理解し、中絶していたのです。しかし彼女もすでに大学を卒業して、社会人になっていました。

「あなたには迷惑はかけません。自分一人でも育てます」と一歩も譲りません。彼女の親も子供を産むことに反対しましたが、彼女の気持ちは変わりませんでした。

女性を愛していた山田さんも最終的に子供を産むことに同意しましたが、ひとつだけ条件を付けました。それは「まだ認知はできない」ということでした。

妻から出された3つの条件

山田さん自身もここまでの事態になったことで、妻にもすべてを伝えなければいけないと考えました。覚悟を決めて、すべてを告白します。妻が激怒するのはもちろん、離婚されても仕方ない、そこまで覚悟していたのですが、妻の反応は意外なものでした。怒ることもなければ、パニックになるわけでもありません。ただ、うつろな表情で山田さんの話を聞くばかりです。

「夫に、自分以外の女性がいたということ」がわかっただけなら怒りが爆発したかもしれません。しかし「その女性に子供ができてしまった」、しかも「夫と相手の関係は浮気ではなく本気の愛」と知ったショックは、怒りを超えた悲しみによるものだったのかも知れません。

もちろん、激怒しなかったからと言って、夫の不貞を許せるはずもありません。女としてのプライドもあります。そこで、山田さんに対して妻から条件が突きつけられました。それは「絶対に離婚はしない」、「彼女との関係は解消する」、そして「産まれた子供の認知はしない」の三つです。

山田さんとしては、妻に対して申し訳ない気持ちもありましたから、条件を飲むことを約束しました。こうして一旦は三者の関係は、なんとか収集することになったのです。

年に数回程度、山田さんが婚外子に会いに行っていることを妻は気づいていましたが、妻は見て見ぬ振りをしていました。同じ女性として一人の男性を愛したことによる、連帯感のようなものもあったのかも知れません。

ただ、あの時以来、妻はあることを考え続けていました。夫には財産といえる財産はないものの、「夫の財産が1円でも婚外子に行くことは絶対に許せない」ということ。やがて妻は、あるアイデアにたどり着き、密かに実行に移します。

それが効力を発揮するのは山田さんの死後のことでした。