シドニー五輪のユニフォームは酷評された〔PHOTO〕Gettyimages

東京五輪の「選手団ユニフォーム」を珍妙なものにしないための一考察

そもそもどうやって選ばれているのか?

東京オリンピックが近づいてきた。エンブレムや「ボランティア制服」などデザインがらみの問題が取り沙汰されてきただけに、選手団公式服装(開会式用ユニフォームの正式名称)のことが気がかりである。選手団公式服装には良くも悪くもその国のお国柄が現れる。日本が開催国になっている2020年はいつも以上の注目が集まるだろう1。だからこそ、一部の関係者だけが自画自賛して終わる珍妙なデザインはやめてもらいたい。

そのためにはどうしたらいいのだろうか。

一つ言えることは、選手団公式服装が決定されるプロセスについては情報公開が不十分で、その決め方も最適解と言えるかどうか分からない方法であるということだ。おかしな決め方をすればそれだけおかしなものができやすくなる。

指摘すべき問題は多いが、今回は、そもそも誰がどうやって選手団公式服装を決めているのかということから整理してみたい。そうすることで、自ずと何が問題であるかが浮かび上がってくるだろう。

JOCもデザイン主体

選手団公式服装を決めるのはJOC(日本オリンピック委員会)の仕事である。選考からデザインが決定された後のプロモーションに至るまで、全ての決定権はJOCが握っている。しばしば混同されるが、「ボランティア制服」の選考は東京都が、五輪エンブレムの選考は東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会が主導しており、管轄が異なる。

もっとも、2020年の東京オリンピックは自国開催のオリンピックであるため、選手団公式服装の選考についても、JOCとこれらの組織の間で連携が取られる可能性が高い。

直近の夏季五輪であるリオデジャネイロオリンピック(2016年)では、いわゆるプロポーザル方式の公募で、高島屋が提案した赤いブレザーと白いスラックスが選手団公式服装に採用された。ロンドンオリンピック(2012年)でも同じ方法で高島屋の提案したものが選ばれたようだ。

ロンドン五輪の選手団公式服装〔PHOTO〕Gettyimages

プロポーザル方式とは、建築設計の委託先を選ぶ際によく取られる方法の一つで、ある事業の受注をめぐって最も安い価格を提示した業者が選ばれる入札制とは異なり、価格、デザイン、組織体制、事業計画の実現性などが総合的に判断される。応募資格に特に制限は設けられていないが、応募段階で、約600人分のユニフォームを生産するための人員配置の説明や縫製工場の確保が求められるため、量産体制が整っている企業でないとなかなか参入が難しい。

 

東京コレクション2に参加しているあるデザイナーは言う。

「いつも縫製を頼んでる会社(工場)にまだ決まるかどうか分からない仕事の縫製を頼むってことはちょっとできないですよね。そのために前々からスケジュールを空けておいてもらって、『やっぱりダメでした』ということになった時の穴埋めができないですから。コレクションブランドはだいたいどこもそうだと思いますよ」

ところで、JOCが公募に際して公開していた募集要項には気になる一文がある。「デザイナー名は一切公表できません」というのである。その意図することころはよく分からない。選手団公式服装が個人の売名に利用されては困るということかもしれないし、万一バッシングが起こった時にデザイナーを矢面に立たせないための配慮かもしれない。

いずれにしても、この規定が設けられていることによって、「名前も出ない仕事に応募するのは馬鹿馬鹿しい」と考えるデザイナーは少なくないだろう。つまり、ファッションデザイナーという存在に向けて広く門戸が開かれているとは言えない

こうしたことまで踏まえて考えると、JOCがどのような選考方法を取るかで、選手団公式服装の方向性がすでにある程度決まってしまうことになる。そういう意味では、JOCもまたデザインの主体なのだ。