「東京地裁はゴーン氏の保釈を認め直ちに釈放せよ」ある会計人の提言

長期拘留には、なんの意味もない

カルロス・ゴーン日産自動車前会長の逮捕劇から半月が経った。推定無罪の原則などどこ吹く風、ゴーン前会長の有罪を前提とした一方的偏向報道の嵐は一向に止む気配がない。しかし、ゴーン前会長にかけられた疑惑はそのことごとくに根拠がない。以下論証する。

先送り報酬の行方

ゴーン前会長の逮捕事由は有価証券報告書虚偽記載罪で、その内容は、2015年3月期までの5事業年度の役員報酬99億9800万円を49億8700万円として計上した有価証券報告書を関東財務局に提出したというものである。

その後の新聞報道によれば、過少計上額50億円はゴーン前会長の役員報酬の先送り額で、ゴーン前会長は、高額報酬の批判を避けるため、先送りした報酬を退職後の顧問料などの名目で受け取ることを計画していたという。

役員に対する将来給付が現時点における役員報酬に該当するかどうかは、企業会計原則における発生主義の原則により判断される。企業会計原則上、将来給付が費用計上されるためには、その将来給付は、

①原因事実の発生、
②支払額の合理的見積もり、
③支払の蓋然性、

という3つの要件の全てを満たしていなければならない。

 

ここで、ゴーン前会長の先送り報酬をゴーン前会長の日産再建という過去の功績に対する後払い報酬と考えると、ここでの50億円は支払が将来になっただけのことで、支払の原因となる事実は既に現時点において発生している。

先送り報酬を役員報酬として計上するための第1要件は満たされることになる。

ところが、ゴーン前会長は、先送りした報酬を退職後の顧問料などの名目で受け取るつもりだったという。そうすると、先送り報酬支払いの原因となる事実はゴーン前会長が将来日産に提供する顧問業務にあるのだから、原因事実は現時点にはない。この場合第1要件は満たされない。

先送り報酬は取締役会の承認を得ていないものの、金額を明示した文書が残されている。第2要件の「支払額の合理的見積もり」は問題なく満たされている。

第3要件の先送り報酬の支払の蓋然性は高いとは言えない。なぜなら、この手の超高額役員給付は、たとえ現時点において明示的に決定されていても、実際には支払われないことが多いからである。

役員に対する超高額将来給付は、ほぼ例外なく、企業の業績好調期に決定される。ところが、10年後にいざこれを支払う段になると、その企業の業績は低迷していることが多い。企業のビジネスモデルの耐用年数が短くなっているのである。

いま現在儲けの出ているビジネスモデルは、そのままの形では、社会変化の激しい中長期において通用しない。過去の業績絶好調期に決定された超高額役員給付は、将来の業績低迷期には、支払いたくとも支払えない。