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残さず食べて!・給食で居残り・部活で米三合…が子どもの心を壊す

間違った「食事指導」の深刻な影響
「給食を残した人は居残り!」「ご飯全部食べないとだめよ」「お野菜も食べなさい」「毎食米三合食え!」……誰もが似たような言葉を一度は耳にしたり、もしくは口にしたりしたことがあるのではないだろうか。口にする側の多くは、子どもの栄養状態を考えたり、スポーツするための体つくりを考えたりしてのものだろう。

しかし、良かれと思ってしているその言葉が、子どもたちを追い詰め、そこから心身の病を発症することも少なくないという。自ら他人と食事ができない「会食恐怖症」に長く苦しみ、現在は克服して『会食恐怖症を卒業するために私たちがやってきたこと』などの著書がある山口健太さんに、それがどれだけ子どもたちを追い詰めているのか教えてもらった。
 

他人と食事するだけで吐き気や動悸が

「人とご飯を食べるのは楽しいこと。」それが一般的な感覚だろう。しかし、私は食堂に入るだけで、いや、食事機会を想像するだけで、吐き気がした。

私は、高校時代を主に「会食恐怖症」という精神疾患に悩んでいた。

これは社交不安症の1つとされており、吐き気、めまい、胃痛、動悸、嚥下障害(食べ物が飲み込めない)、口の乾き、体(手足)の震え、発汗、顔面蒼白、呑気(空気を飲み込んお腹が張る)、緘黙(黙り込んでしまう)などの症状が出てしまう。

私の場合は主に、吐き気、嚥下障害、動悸が強く症状として出た。

なぜ、このようになってしまったのか?

私の場合は、部活動での食事指導が主なきっかけとなった。具体的に言うと、所属していた野球部での食トレが大変厳しいものだったのだ。

”要求されるノルマ”として、「合宿中は朝2合、 昼2合、夜3合のお米を食べる」というものがあった。

私は元々、どちらといえば少食ではあるが、それに備えて家で食べる練習をしたりもしていた。しかし、実際の部活の食事場面になると「そんなに食べられるのか」という不安も高まり、ごはんが喉を通らなかった。

さらにその上で、監督には怒鳴られる。

美味しそうな炊きたてご飯を見ても、むしろ吐き気を催す状態。体を作るためにたくさん食べることも必要なころもあろうが、本末転倒になってしまうと山口さんのように心が折れてしまう Photo by iStock

悔しくて涙も出たし、「いっぱい食べたい!」という意思に反して体は言うことが効かず、食べられない。飲み込めない……。

「普通、ごはんは楽しいもののはずなのに、なぜ自分だけこのようなことになってしまったのか……」私は自分を責め、高校時代は大変辛かった。部活を続ける事自体は出来たが、いつも「食事の不安」がつきまとっていた。

幸い、大人になり症状を克服することができて、今ではごはんを楽しく食べられるようになり、今では克服のサポートをする側となっている(その過程は自著『会食恐怖症を卒業するために私たちがやってきたこと』に詳しい)。

しかし、今でもこの「会食恐怖症」や、完食の強要などの「行き過ぎた食事指導」に悩む親子はたくさん存在し、毎日何通もの相談が届くような状況だ。

今回はそんな経験から、行き過ぎた食育がいかに間違っているのか。その真実をお伝えしていきたい。