『転生したらスライムだった件』が企業とのコラボを続々展開するワケ

1000万部突破の人気作

1000万部突破の人気作

日本最大級の投稿型小説サイト「小説家になろう」をご存じだろうか。無料で小説を投稿したり、掲載された小説を読んだりすることができるこのサイト。人気となった作品は、書籍化やアニメ化されることも珍しくない。

現在、同サイトの登録者数は140万人超。61万以上の作品掲載数を誇り、ファンタジー、純文学、ホラー、コメディなどジャンルも多岐にわたる。

その中で、ひときわ人気を集めるのが、“異世界”を舞台とする作品群だ。

 

主人公が異世界に転生や転移をすることで物語が進む「異世界モノ」は、古くはルイス・キャロル作『不思議の国のアリス』、国内では手塚治虫作『火の鳥未来編』などの名作があるように、古今東西問わず親しみを持って読まれているジャンルのひとつだが、近年では「中世ファンタジーの世界に飛び込んでしまう転生モノ」が人気となっている。

そんな異世界モノで、昨今、絶大な支持を集めている作品が、『転生したらスライムだった件』(通称『転スラ』)だ。

作者である伏瀬(ふせ)氏が、2013年に「小説家になろう」に投稿して以降、ジワジワと人気が拡大。あれよあれよと書籍化、漫画化が進み、現在(2018年11月時点)関連書籍の累計発行部数が1000万部を突破。今年10月からはアニメ放送(TOKYO MX、BS11、MBSほか)も始まるなど、快進撃が続いている。

TVアニメ『転生したらスライムだった件』ホームページより

異世界転生モノというジャンルにふさわしく、書籍、漫画、アニメへと転生を繰り広げる本作だが、もう一つ特筆すべきなのが、企業とのコラボレーションが多い、ということだ

これまでに、ムンディファーマ株式会社の「イソジン®うがい薬」、岩下食品株式会社の「岩下の新生姜」、UHA味覚糖の「ぷっちょ」、ラーメンチェーン店「幸楽苑」……など、知名度の高い商品・店舗と続々コラボを立て続けに行っているのである。

左から「イソジン®うがい薬」「幸楽苑」「ぷっちょ」とのコラボレーション

一体なぜなのか。

「『転スラ』は、サラリーマンだった主人公が不慮の事故に遭って死んでしまい、異世界でスライムとして転生するというストーリーです。このスライムは、あらゆるものを捕食してしまうスキルや、あらゆるものの解析や演算をしてしまうスキルを持っているのですが、この設定をもとに『スライムが企業の商品を捕食して、その商品に姿を変える』という形で、さまざまな商品・サービス、店舗さまとのコラボレーションを行っています」

そう話すのは、同作品の宣伝プロデューサーである株式会社バンダイナムコアーツの鶴橋能里子さん。主人公のスライムが企業のロゴを飲み込み、そのロゴに変化する……といった具合に、商品とのシンプルなコラボが可能なことが、企業側にも好評なのだという。

生命保険×スライム

ユニークなコラボ広告を次々展開する『転スラ』。今年10月には、生命保険会社「ライフネット生命」とのコラボサイトがオープンした(https://www.lifenet-seimei.co.jp/ten-sura/)。作品の世界に、企業のキャラクターを登場させて二次創作的なストーリーを作り出すという、転スラのコラボ企画の中でも少し変わった取り組みで、ファンの間でも話題を集めているという。

ホームページ(https://www.lifenet-seimei.co.jp/ten-sura/)より

生命保険会社が「投稿サイト発の異世界モノ作品」とどうコラボをするのか? 互いに接点がないように思える企画だが、なぜ今回のコラボが実現したのだろうか?

ライフネット生命保険株式会社のお客さまサービス部長の古川さんは説明する。

「ライフネット生命はインターネットを中心に生命保険を販売する会社です。今年開業10周年を迎えましたが、保険会社としてはまだまだ新しい会社です。『むずかしい』と思われがちな生命保険を身近に感じていただきつつ、皆さんに楽しんでいただける企画にこれまでも取り組んできました 。

今回の企画をご一緒した背景のひとつには、社内で漫画好き、アニメ好きな社員が多かった、というのがあります。社員達が純粋に好きなものを題材にして何かできないか? そういう純粋さから生み出されるコラボレーションが若い人達には受け入れられるんじゃないだろうか、という思いがありました。

ライフネット生命の加入者の半分以上は 20代と30代なんです。比較的若い世代がライフネット生命を選んでくれる傾向にあり、その世代の関心は、いかにもな宣伝文句をちりばめたものには向いてこない。自分達が楽しいと思う取り組みをやってみて、それを面白がってくれる人達を集める、というような展開 ができないかと考えたんです。

当社は、以前にも個性的なキャラクターと独創的なストーリーで話題となった 『ACCA13区監察課』とコラボ企画を実施したことがあります。このときも、作品がすごく好きでもっと多くの人に知ってほしい、という社員の熱意がベースにありました。結果、最大公約数的な作品ではなく、ある特定の顧客層に対して人気の高い作品とコラボをした方が、より受け手の印象に残るんじゃないか、という感覚がありました。

その後、次はどんなコラボが出来るかなと考えていた時に、『ACCA13区監察課』を担当されていた方から『転スラ』をご紹介いただきました。20代~30代に人気があり、社員や社員の家族にも熱烈なファンがいる。読んでみると作品として非常に面白い。

主人公が元サラリーマンという、企業コラボし易い要素があることなどは、そのときは考えてはいなくて、単純に面白いと思ったので『転スラ』とのコラボ案を推進しようと決めました。

『転スラ』のファンの方は、SNSを有効に使ってファン同士で情報交換もされていますよね。こんなに作品を愛しているファンの方々だったら、ライフネット生命とのコラボをも面白がってくださるのではないか、もし心に刺さって、結果的に広く拡散されたらすごく幸せだな、と。

企画に関しては、所属部署に関係なく作品のファンである社員に関わってもらいましたので、実際、ファンの目線に近いものになっていると思います」