# インバウンド

京都で観光客排斥運動が起こる恐れアリ…!インバウンドの深き闇

「ここまで来たか!」の驚きの実態
村山 祥栄 プロフィール

激震、景観条例が規制緩和へ!?

2018年11月、京都市は厳しい高さ規制などを盛り込んだ景観条例の規制緩和を打ち出し、京都の景観が失われるという危機感が全国を駆け巡った。

しかし、これも京都独自の課題があることを指摘しなければならない。京都市の門川大作市長は就任以降、観光文化都市に大きく舵を切り、ホテルを誘致し、観光客の誘致を進めてきた。

観光人口の大幅増という大いなる追い風はあるものの、観光戦略として一定の成果を収めるに至った。

 

しかし、その一方で、京都市の課題は若者世代の流出が止まらないことにある。端的に言うと、仕事を求めて大学生が、また、廉価な住宅を求めて新婚世帯が大量に流出している。つまり、「働くところ」「住むところ」が確保できず、若者世代が流出することで都市の根幹が揺らぎ始めているのである。

中心部の土地はほぼ例外なくホテル建設用地へと転用され、新築のオフィスビルやマンションは姿を消した。オフィスの空室室は0%台を推移し、賃料は過去最高を更新している。住宅価格も著しい高騰を続けた。

そもそも京都市は、景観条例が成立して以来、大通り沿い31メートル、その他15メートルという厳しい規制から高層化ができず、そもそも中心部のマンションやオフィスビルは高い収益が期待できない。それでも一定の収益率を確保できるホテルの一人勝ちは当然の結果だった。

そこにインバウンドが追い打ちをかけた。住宅に比べ利回りが高い宿泊施設が高値ですべて買い占めてしまい、マンションデベロッパーは土地を仕込めず悲鳴をあげる。今回の景観条例の規制緩和は、こういった背景から打ち出された苦肉の策ともいえる。

インバウンドのための景観政策が、インバウンドによって見直しをせざるを得ないというのは皮肉としか言いようがない。

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観光公害で、観光客排斥運動も?

「観光公害」──。

そんな言葉が市井からは漏れ聞こえてくる。

京都市は京都市市民憲章に「観光客を温かく迎えましょう」という掲げているが、温かく迎えられない環境になりつつある。京都市のインバウンドは、観光客誘致という局面から観光公害対策という次のステージに舞台を移しつつあるのだ。

しかし、海外に目を向けると、これは決して驚くべきことではない。

イタリアの水の都ベネチアでは、人口5万人に対し3000万人の観光客が押し寄せ、住民生活を脅かしている。賃貸住宅が民泊に用途変更され、住民は郊外へ移住を続けている。町中に観光客が溢れ混雑し、町全体が観光地化し、肉屋、パン屋、洋裁店など市民生活に欠かせない店は次々と廃業するなど生活に支障をきたす有様だ。観光客のマナーの悪さも住民感情を逆撫でしている。クルーズ船のせいで潟の環境破壊も懸念される。

結果、反観光客デモも日常茶飯事となった。観光都市が観光客を追い出しにかかるという異常事態が繰り広げられているのである。

まさに観光客にとっても住民にとっても不幸な構図だ。ベネチア市は観光客の移動を制限したり、クルーズ船の乗り入れ禁止、エリアによる入場制限など市は対策に乗り出している。

バルセロナの観光客削減策

京都市(人口146万人)の同規模で似ているのは、スペインのバルセロナ(人口160万人)だ。ベネチア同様に観光公害に悩まされた当市は、民泊には固定資産税の上乗せを行い、ホテルをはじめ観光関連施設の建設を認可しないとし、実質的な観光客の削減策に乗り出している。

観光公害問題は深刻化すると、観光都市は観光客が来ることによる観光消費額をはじめとした経済的効果や文化交流などのメリットを享受できなくなることはもちろんだが、観光客にとっても満足値の低い残念な旅行になり、誰も得をしない「三方よし」ならぬ「三方悪し」になりかねない。残念ながら、ここ数年、京都の観光客の満足度も年々ポイントを下げている。

インバウンドに成功すると必ずやってくる観光公害。観光客一辺倒のインバウンドは必ず住民との対立を生むことは歴史が証明している。

観光客の適正数の検討、それを見越したインフラ整備、住民に対する納得感の創出など早期に着手しなければ、京都でも観光客排斥運動が起こる日はそう遠くないかもしれない。