2019年夏、北方領土「二島返還」を問う衆参ダブル選の可能性

安倍首相は腹を括った
佐藤 優 プロフィール

トランプとは「ディール」できる

邦丸:おもしろいというか大変なのが、そこに当然、目をつける大国がある。中国ですね。

佐藤:そうなんです。だから、そこのシーレーンを日ロできちんと確保して、日本としても、ヨーロッパとの重要な交通の動脈という形で持っておかなければならないわけです。

そういったことを考えると、北方領土問題さえ解決すれば、ロシアとは仲良くできる。そこのところに安倍さんが踏み込んだ。

 

もう一回言いますが、チョイスは二つ。「四島一括返還」を言い続けて一島も返ってこない、行けない、海も使えない、経済開発もできないというのが一つ目。二つ目は、二島が返ってきて、国後島と択捉島も含む四島へ自由に行けるようになって、海も使えて、経済活動もできるようになる。日本人が進出していくから、将来的に日本への帰属替えを要求する環境整備もできる。

安倍首相はすでに後者の選択をした。あとは国民がどう判断するか、というところに来ているわけですね。

邦丸:それが、来年夏の総選挙。

佐藤:これからだんだんと具体的に煮詰まってくると思います。今はまだ、この構図が見えている人が少ないから「二島先行返還」とか「二島+α」といった見方が出てきていますが、正しくは「二島返還+α」です。

邦丸:日ロ両首脳の合意がほとんどできている、となったら、ドナルド・トランプ大統領はどんなふうに見るんですかね。

佐藤:大丈夫だと思う。トランプ大統領という人は、「シンゾーにとってそれだけ重要なことだったら、そこはいいよ、譲る。その代わりディール、取引だ。じゃあ、貿易でどれだけ色を付けられる?」と、こういう取引型の人で、あまり原理原則でやる人ではないですから。金正恩と取引できる人なんだから、安倍さんやプーチンさんと取引できないはずがない。

安倍政権の状況認識

佐藤:それから今回重要なのは、秋葉剛男さんが首脳会議に同席しているということなんです。

邦丸:外務次官ですね。

佐藤:今までにないことです。ということは、外務省もこの「二島返還+α」で全力を挙げてやるということで、その意味で杉山(晋輔・前次官)時代にはなかったことが起きているわけだから、外務省は命がけでやっている。国策も変更になりますから。

安倍政権も、もし国民が反発したら政権は終わるかもしれないけれど、それと引き換えでもいい、と。というのは今、中国・韓国・北朝鮮がこれだけ力をつけてきて連携しているし、アメリカもアジアから退いている。この状況で、ロシアと連携してカウンターをとらないと日本の国益にならない。そこを安倍さんはわかっているんですよ。

これは、やはり政権を5年もやっていると、日本が追い込まれてきているということがわかるから、どこで防衛線を強化するかということを考えている。

邦丸:じりじり後退はしているけれど、これ以上はもう下がりませんよ、というラインですか。

佐藤:そうです。ここで一生懸命、態勢固めををやっている。入管法の改正も一緒なんですよ。移民の問題に関しても、もうこれ以上放置できなくなった。だから安倍政権というのは今、非常に現実主義的になっていますね。

それから今の閣僚の方たち、同日選挙となればまた組閣がありますから、みな替わるということになります。いろいろな面で衆参同日選挙は、政権にとってプラスはあってもマイナスはあまりないんじゃないかと思います。

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