2019年夏、北方領土「二島返還」を問う衆参ダブル選の可能性

安倍首相は腹を括った
佐藤 優 プロフィール

平和条約調印のタイミング

佐藤:それで今、ロシアと日本はお互いに「大人の対応」をしているわけです。

プーチン大統領は「島の主権がどちらになるのか書かれていない」と。確かに「引き渡す」としか書いていません。しかし、土地を引き渡しても主権を渡さないなんていうのは、「肉は切っても血は流すな」というような話ですから、当時の交渉経緯をちゃんと見れば、主権については自明だから書いていないだけだ、ということははっきりわかる。

ただ、たとえば住民をロシア国籍にするのか日本国籍にするのか、あるいはロシア国籍のまま永住権を与えるのか、そういう議論がたくさん必要になる。「主権を含めて、いろんなことがありますよ」と、ロシア国内向けにプーチン大統領は言わないといけない。

一方で日本政府も、「われわれは当然、国後島と択捉島も返還を要求していますから、その立場は変えていません」と現時点では言わないといけない。お互い、国内向けに言わないといけないことがあるけど、そこは非難しない。そこまで合意できているわけです。

 

邦丸:じゃあ、もう九分九厘は合意できているわけですか。

佐藤:そこまで行っているかはわからないけれど、九分までは行っています。

邦丸:ほお~。

佐藤:だから、1月に安倍首相がロシアに行くという情報が流れていますよね。その前にアルゼンチンのブエノスアイレスで行われるG20で会って、その後1月にロシアに行って、基本的な方向ができて、たぶん6月の終わりにプーチン大統領がG20で大阪に来る。

邦丸:そこで。

佐藤:もしかしたら平和条約調印かもしれない。歯舞群島・色丹島が日本領になるということが決まる。そして、解散総選挙で民意を問う。それから国会批准。

そういうペースで進むので、もう来年の終わりか再来年には、歯舞群島・色丹島はもとより「じゃあ邦丸さん、これから番組で国後島の取材に行こうか」「はいはい」と、簡単に行けるような状況になっているかもしれません。

日本とロシアは利害が一致する

邦丸:もう一つ聞きたいんですけど、日本とロシアがこういう形で接近していますよね。一方で、北朝鮮問題ももちろんそうですが、韓国、北朝鮮、そして中国の三国がタッグを組みつつあるように見える。

佐藤:そうです。元徴用工の問題が出てきて、1965年の日韓基本条約で解決していることを蒸し返しているわけですが、ロシアという国は、そういう古い話の蒸し返しが大っ嫌いなんです。だって、シベリア抑留で日本人を60万人強制労働させたわけでしょ。その補償問題なんて出てきたらどうなるか。

なので、ロシアにとっては「昔のことを蒸し返すのはやめましょう」というのが国益です。この韓国の徴用工問題に関しても、「過去の合意は尊重しましょう。われわれだって1956年に歯舞群島・色丹島を引き渡すと言ったから、もう60年以上経ったけど、約束なのでやりますよ。約束は守らないと、国際秩序がうまくいかないじゃないですか」という側に立つ。

邦丸:日本とロシアはタッグが組めるわけだ。

佐藤:組める。過去のことをほじくり返されるとあまり都合がよくない国が二つあって、それが日本とロシアなんです。

それから中東では今、サウジアラビアが大変なことになっているでしょ。もしエスカレートすれば、スエズ運河もホルムズ海峡もどうなるかわからない。そうすると、喜望峰回りの航路しかなくなってしまう。

邦丸:船はアフリカの南端を通らなくてはならなくなる。

佐藤:でも最近は、砕氷船の技術が向上したのと地球温暖化で北極海が通年通れますから、そこから簡単に行ける。

邦丸:北回りのルートがあるんですね。

佐藤:そうです。その北回りのルートを、日ロでうまく使っていく。ロシアの港に入るには宗谷海峡か津軽海峡に入らなければならないから、ロシアは日本と仲よくしておかなくてはいけない。