2019年夏、北方領土「二島返還」を問う衆参ダブル選の可能性

安倍首相は腹を括った
佐藤 優 プロフィール

「ちょっと遊びに」行けるようになる

佐藤:ちなみに、国民投票は外交問題には馴染みません。イギリスのEU離脱を見てもわかるように、ポピュリズムに流されかねませんから。

いま、日本国民の前には二つのチョイスがあるんです。一つ目は、「四島一括返還」あるいは「四島即時一括返還」と言い続ける。これではロシアは交渉に応じないから、一島も返ってきません。ビザなしで行ける仕組みがあったんですが、これも最近トラブルが生じていて止まります。

つまり、一島も返ってこず、行けなくなるし、海も使えない。ただし、北方領土返還運動団体の仕事は残るし、四島即時一括返還だ、ロシアには断固たる態度でやれと講演するようなナントカ大学名誉教授とか、そういった人たちの仕事は残るでしょう。

 

二つ目は、二島還ってくる。自由に四島に行けるようになる。海も使えて経済活動できるようになる。さらに、いったん国境を引くけれど、50年後とか70年後に日本人が国後島・択捉島にたくさん住むようになって、そのときに帰属替えを要求することは当然できる。そういう選択肢です。

邦丸:国後・択捉に関していえば、今後はそこに日本人が企業進出をするなり、日本人が自由に行き来するなりできる。

佐藤:「ちょっと遊びに行こう」という感じで簡単に行けるようになる。ビザなし、状況によってはパスポートすらなしで行ける仕組みができるかもしれない。たとえば、マイナンバーカードを持っているなら、ロシア語の翻訳証明を付けて持っていけば、国後島・択捉島に関しては特別入国を認めるというようなことも、交渉次第では十分可能だと思います。

アメリカは基地を作れるのか?

邦丸:ここで佐藤さんに伺いたいのは、アメリカの存在です。ロシアが非常に気にしているのが、歯舞・色丹を引き渡した場合、日米安保条約あるいは日米地位協定に基づいて、アメリカが基地を作れるということなんですね。

佐藤:ウラ話をしちゃいましょう。外務省には『日米地位協定の考え方』というマル秘のマニュアル本があります。これがどういうわけか、琉球新報に抜けちゃったの。

邦丸:え~~!?

佐藤:琉球新報が、それを高文研という沖縄の出版社から出しているんです。

邦丸:それって、外務省のマル秘文書なんですよね?

佐藤:マル秘文書がまるまる出ています。本屋さんでもアマゾンでも買えます。

そこには「仮に北方領土が返還されることがあっても、そこに米軍を駐留させられないと日本が言うことはできない」という註が書いてある。それがロシア側に伝わって、プーチン大統領が読んじゃった。なるほどこういう密約があるのか、これは米軍が入ってくるだろうな、とロシアは思ったわけです。

でも、それを受けて外務省は徹底的に調べたんです。そうしたら、この文書をまとめた当時の担当官がソ連嫌いで勝手に書いただけの話で、外務省としての意思でもないし、アメリカとの約束なんて何もなかった。だから、その調査結果をロシアに伝えてあるんです。

邦丸:根拠がないから大丈夫だよ、と。

佐藤:そうです。プーチン大統領もそこはわかっています。だって今、歯舞群島・色丹島に米軍は展開していませんが、日本の安全保障に何か問題ありますか?

邦丸:ないですね。

佐藤:つまり二島が返ってきたときも、展開しなくても何の問題もない。オスプレイは皇居の上を飛ばないでしょ。日米合同委員会があるわけで、アメリカといえど勝手に展開することはできない。日本は主権国家なので、そこは担保できる。そこのところがきちんとプーチン大統領の頭には入っている。だから動き始めたんです。