2019年夏、北方領土「二島返還」を問う衆参ダブル選の可能性

安倍首相は腹を括った

※本記事は『佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」』に収録している文化放送「くにまるジャパン極」の放送内容(2018年11月16日)の一部抜粋です。野村邦丸氏は番組パーソナリティです。

「二島返還+α」とは何か?

邦丸:佐藤さんは、11月14日のプーチン-安倍会談のずいぶん前から「歯舞・色丹は返ってきそうだ」とおっしゃっていました。プーチン大統領の発言は、実はロシア国内のメディアのためだったんですね。

佐藤:そのとおりです。重要なのは、「日本との対話を復活させた」ということです。日本の報道はズレている。

日本では「二島先行返還」という説が出ているでしょ。歯舞群島・色丹島を先に日本へ還して、国後島・択捉島は継続協議で、あとで還ってくる可能性があるというものです。でも、その可能性はゼロです。

邦丸:ゼロ!

 

佐藤:なぜなら、現在の交渉の経緯は、「国後島・択捉島が交渉の範囲に入るなら、日本とは対話しない」というスタンスをプーチン大統領がとっていたから。1956年の日ソ共同宣言を基礎に交渉するということで、東京宣言(1993年)やイルクーツク声明(2001年)は入っていない。これは、国後・択捉は主権交渉の対象から外しますという意味なんです。ですから、「二島先行返還」ではなくて「二島返還+α」が正しい。

邦丸:歯舞群島・色丹島の二島を引き渡した後の「+α」ですね。

佐藤:そういうことです。還ってくるのは二島。すなわち、歯舞群島と色丹島は日本の主権下で、国後島と択捉島はロシアの主権下。それを認めて国境線を引きましょうと。国後島と択捉島には、日本人は自由に行けるようになります。

邦丸:国境を引くことで、逆に自由になる。

佐藤:国後島と択捉島には、ロシアの主権下で特別な規則に従って日本企業が土地を借りて、自由に営業できる。あるいは協定をつくってもいい。ロシアの企業は、たとえば色丹島に漁業コンビナートを持っていますから、そこはロシアが土地を借りてロシアの規則の下で操業できる。このように相互乗り入れしていきましょうと。

それから、1956年に日ソ共同宣言ができたときには、排他的経済水域(EEZ)200カイリという概念はなかった。だから「島を引き渡す」という約束をしても、海については何の約束もしていない。海も日本にちゃんと返してくれ、ただしロシアの入業も保障する、と。

歯舞群島・色丹島周辺のEEZと国後島・択捉島周辺のEEZを比べると、前者のほうがちょっと大きいんです。

邦丸:そうなんですね。

佐藤:それに、歯舞群島・色丹島のほうが漁場としてもいい。それが返ってくる。ロシアにも使わせるけれど、国後島の沖合にもすごくいい漁場があって、そこには日本も入れる。こういう仕組みになるので、二島の領土に+αで、「自由に行ける」「経済活動ができる」というのが付いてくる。これが「二島返還+α」ということです。

ただし、日本はこれまで「四島が日本領だと確認してから、平和条約締結だ」ということだったから、大きな政策変更です。だから民意を問わなくてはいけない。来年は、北方領土の問題で解散総選挙になると思います。

邦丸:来年7月に参議院選挙が予定されていますが、そこで総選挙もやる。

佐藤:逆算するとそうなるんですよ。まず5月に改元があるので、それまで選挙はできないですよね。10月には消費増税があるから、その後に解散したら与党が敗けるかもしれない。すると、6〜9月しかないんですよ。7月には参院選がある。それ以外の月に衆議院選挙をやるのは難しい。だから、W選挙になりますよ。

邦丸: なるほど。これまで国策だった「四島一括返還」という方針を変える、と。

佐藤:「四島一括」でなくても、「四島は日本領だ」と確認されない限り平和条約をつくれない、というのが日本政府の立場でしたから、それが「二島」で平和条約をつくるとなると、大きな国策転換です。