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日産ゴーン事件がVWディーゼル不正と「地続き」だと言える理由

この「大きな流れ」は止められない

ドイツ自動車メーカーの躓き

2015年9月に明るみに出たVWのディーゼル車の不正ソフト事件は、ドイツ国民にとってみれば青天の霹靂、天から降って湧いたような事件だった。しかし、その後、世界の自動車業界で起こっている動きを見ていると、あの事件は本当に、単なる排気ガスをめぐるスキャンダルだったのかという疑問が浮かんでくる。

今、世界のクルマ事情は、紛れもなく新しい方向に動き始めている。VWのディーゼルゲートも、今回のルノーと日産の問題も、米中貿易戦争も、その大きな流れの中の一コマとして考えれば、結構、辻褄が合うのではないか。

3年前のディーゼル事件については繰り返すまでもないと思うが、VWが自社の車に、検査時だけ窒素化合物の排出を抑えるソフトをこっそり搭載していたことが暴かれた事件だった。それをVWは「クリーン・ディーゼル」と呼んで、世界中で売りまくっていた。

この不正を暴いたのはアメリカの環境保護局(EPA)など。しかし、すでに多くの主要メディアが書いているように、VWが違法ソフトを搭載していたことを、アメリカ当局はかなり前から知っていた。それどころか、VWに警告まで発していたというが、 VWはなぜか動かなかった。

ところが、不正が告発された途端、事態は急変した。VWは全面的に罪を認め、アメリカで刑事と民事を合わせて総額43億ドルの罰金その他を支払い、さらにアメリカとカナダの顧客に22億ドルの保障をした。

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問題はVWからすぐさま傘下のアウディやポルシェに飛び火し、結局、今年になってドイツでも、VWは10億ユーロ(約1300億円)、アウディは8億ユーロ(約1000億円)の罰金を課せられた。また、ポルシェも不正ソフトを搭載していたことがばれ、6万台のリコールを命じられ、今年9月には、ディーゼル車からの撤退を発表した。

そればかりか、ベンツのダイムラー社にまで捜査が入っている。6月、CEOのツェッチェ氏がベルリンで、深刻な面持ちで交通相らと会談している様子が報じられたかと思うと、まもなくダイムラーも違法ソフト搭載のかどで、EU内での77万4千台の回収と無償修理を命じられた。

そして、その数日後、今度はアウディのCEOシュタートラー氏の逮捕へと続く。ドイツの花形であった自動車産業は、ディーゼル車のせいで、今や軒並み名誉を失う事態に陥ってしまった。

 

ドイツでは、登録されている車の3割強がディーゼル車だ。思えばこれまでドイツ政府は、CO2をあまり出さないディーゼル車を、環境のためとして奨励してきた。だからこそ多くのドイツ人は良かれと思い、割高なディーゼル車を購入した。その代わりに、政府はディーゼル燃料に補助をつけた。つまり、ディーゼル車の持ち主は、車の割高な分は、あとあとの燃料の安さで元が取れるはずだった。

ディーゼル支援はドイツの国策とも言えた。EUから日本車を締め出すためにも、アメリカ市場への進出のためにも、有効な作戦だったろう。ドイツでは自動車産業と政府は常にスクラムを組んできた。そして、世界に出て行くドイツ車は国民の誇りだった。それだけに、違法ソフト問題での躓きは大きかった。

ちなみにVW社は前述のように、アメリカとカナダでは車の持ち主に潤沢な保障をしたが、ドイツの持ち主に保障はなく、修理工場に車を持っていけば、無料でソフトの調整をしてもらえるだけだ。それにより窒素化合物の排出が減少するという触れ込みだが、信じる人は少ない。そうするうちに、中古車市場でのディーゼル車の値が崩れた。

今や、ドイツの「クリーン・ディーゼル」の持ち主は踏んだり蹴ったり。ディーゼルそのもののイメージが悪化し、古い型に乗っている人は、犯罪者のように肩身が狭くなってしまった。そして最近、彼らにとってさらに不幸な状況が作り上げられようとしている。