相手がうなずきながら話を聞いてくれると、なんだかうれしくなる。話が通じている気がする。相手はとってもいい人なのかもしれないと思う。
だが、私がこう感じるのは、相手がうなずいてくれているからなのか、それとも顔の表情なのか。あるいは、私を見つめて聞いているからなのか。
だがやはり人は、相手の「うなずき」という動作を手がかりに、「この人は性格が良さそうだ」「好ましい」「近づきやすい」と判断しているという研究結果を、山形大学の大杉尚之(たかゆき)准教授らが発表した(プレスリリースはこちら)。
大杉さんらは、コンピューター・グラフィックスで作った48人の顔をモニター画面に映し、18歳以上の男女計49人に見せて「好ましい」「近づきやすい」などの印象を0~100点の数値で評価してもらった。
その際、正面を向いてかすかにほほえんでいる顔のほかに、その顔のまま首を縦に振ってうなずく動作、左右に首を振る動作をしている動画を加えた。
こうしておけば、画面で見せる顔に表情の変化はなく、声もないので、見る人の印象に与える「うなずき」「首振り」という動作だけの影響を調べることができる。
その結果、「うなずき」の動作を見た場合は、ただ正面を向いている顔のときに比べて、「好ましさ」の値は18%、「近づきやすさ」の値は32%増えていた。
「首振り」に比べると、それぞれ27%、55%も増えていた。
うなずくだけで、相手は、何もしない場合より2~3割増しの好印象をもってくれるという結果だ。
また、「うなずき」の動作が「見た目の好ましさ」と「性格の好ましさ」のどちらの印象に影響するかを調べたところ、何も動きがない場合に比べ、「見た目の好ましさ」が6%の増加だったのに対し、「性格の好ましさ」は19%も増えていた。
つまり、「うなずき」の動作は、相手に「きっとこの人は性格がいいんだろうな」という気持ちを起こさせ、それが「好ましい」「近づきやすい」といった印象をもたらす。
うなずいたからといってイケメンだと思ってもらえはしないが(今回の研究で使った画像はすべて女性だったが)、性格が良さそうでイイ感じだな、となることはあり得るわけだ。乱用しないようにしよう。
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