撮影/佐藤亮(以下同)

メンタル強者・遠藤保仁に学ぶ「プレッシャーに強い自分の作り方」

ワールドカップでも緊張したことがない

多くの人がストレスにさらされ、生きづらいと感じている現代。誰もが、「楽になりたい」「ありのままの自分を受け入れてほしい」と休まる場所を探している。

そんななか、プロサッカーという勝負の世界に生きながら、「ストレスは溜まらない。ぜんぶスルーしてるから」と言い切る男がいる。

遠藤保仁――20年以上にわたって、J1の最前線で活躍し、ワールドカップの大舞台でも自分を見失うことなく、冷静にプレーしてきた。彼は、なぜいつもマイペースでいられるのか? 分析してみると、そこには「生きにくい現代を楽に生き抜く」ヒントが隠されていた。

 

緊張を緩めるには深呼吸がベスト

「ワールドカップでも、Jリーグでも、緊張したことがない」

大事な局面では、多くの人が緊張します。しかし、遠藤さんは、「試合で緊張したことがない」と言います。試合での様子を見ても、実にのびのびと動き、ボールによく反応できていることがわかります。

遠藤さんがどんな試合でも緊張せずにプレーできる理由のひとつとして考えられるのが、体の動き。彼はプレーしながら、無意識のうちに緊張を緩和させる呼吸や体の動かし方ができているのです。

緊張すると、胸の鼓動が早くなったり、手足が冷たくなったり、体が硬くなったりします。緊張する理由は人それぞれでも、緊張によって起こる体の反応はだいたい共通しています。これは、緊張が人間の生理現象のひとつだからです。

人間はサルから進化した生物で、かつてはライオンなどの肉食獣から襲われる危険が常にありました。ですから危機を感じると体をいち早く反応させ、身を守ろうとしたのです。

たとえば心臓がドキドキと脈打つのは、すぐに動き出せるよう全身に血液を送るから。手足が冷たくなるのは、攻撃に備えて体が緊張状態になり、毛細血管がぎゅっと縮まるからです。

このように緊張反応とは、人間の体が外敵から身を守るために作り出した、自己防衛メカニズムなのだと考えられます。緊張してドキドキするのは、あくびやくしゃみなどと同じく生理反応なので、ドキドキしないように脳でコントロールすることは不可能なのです。

では緊張反応が出てしまったら、どうすればよいのか。

それには、脳に「今は危険なシチュエーションではない」と知らせてあげることが大事です。

3回以上ゆっくり深呼吸をして、心の中で「ここは安全だ」と唱えましょう。深呼吸を繰り返すうち、動悸は落ち着いていきます。また副交感神経が優位になるよう、リラックスできるような美しい風景を思い浮かべるのも、効果的です。

イラスト/エイイチ(以下同)

不安は行動することで回避できる

「どんな時でも、不安を感じたりはしない。『人生、どうにでもなる』って思ってる」

若い世代の「将来への不安」、中高年の「老後の不安」など、“漠然とした不安”に悩んでいる人がたくさんいます。人はなぜ、不安を抱えてしまうのでしょうか。

人間が地球上で弱い生物だったころ、不安は生き残るために非常に大切な要素でした。不安を感じなければ無警戒になるため、命を危険にさらすことになります。

不安を感じるからこそ、周囲を警戒して自分の身を守り、危機を回避することができ、そうやって人間は厳しい生存競争を勝ち抜いてきたのです。

しかし、今の日常生活では「命の危険」を感じる場面はほぼありません。その代わり、大きなプレッシャーを抱えるストレスフルな場面で、失敗をしてしまったときのネガティブな感情が不安にすりかわり、“心理的な危機”として人の心を追い詰めているのです。

遠藤さんが不安を感じない理由は、「不安は自分の中から生まれるもの」だと理解しているからです。多くの人は不安を、外からの要因で感じると思いがちですが、不安とは自分自身で勝手に作り出しているもの。自分が何をすべきかわかっていないから、気持ちが落ち着かず、漠然とした不安がどんどん膨れ上がっていってしまうのです。

遠藤さんは試合でもプライベートでも、常に「自分が何をすべきか」を瞬間的に考えて行動に移しています。不安を招きそうな問題に直面しても、「その問題を解決するにはどうすればよいか」を冷静に考えてアクションを起こすので、不安が生まれるスキがありません。

もし、不安にとらわれてしまったならば、まずは深呼吸を繰り返して、「大丈夫」「できる」と自分に言い聞かせましょう。気持ちが落ち着いてきたら、自分が何に対して不安を感じているのか、ノートなどに書き出してみるとよいです。

あなたが不安を感じている理由を明確にすれば、遠藤さんのようにやるべきことが見えてきて、具体的なアクションを起こすことができます。実際に行動していれば、不安な気持ちは自然と小さくなっていきます。