焼け焦げた空き家(撮影:野澤千絵氏)

すでに4戸に1戸が「予備軍」…。空き家を抱えるリスクに備えよ

今こそ、住まいを終活しよう!
 
将来、空き家になる恐れのある「空き家予備軍」は、すでに戸建ての4戸に1戸に達している。そして、2033年には3戸に1戸が空き家となると予測される。実家を相続して、あなた自身が空き家を抱える可能性も大いにあるし、あなたの親族から知らぬ間に、「問題空き家」を押し付けられることさえある――そんな空き家リスクを回避するために、最新刊『老いた家 衰えぬ街』著者の野澤千絵氏が提言するのは、全国民が住まいを「終活」することである。

「空き家」もいろいろ

・所有者が鍵を失くして誰も入れない
・家の中に猫や狸の死骸が散乱
・相続人が増えすぎて手が付けられない
・相続人全員から相続放棄されている
・所有者が認知症で意思確認ができず誰も手を出せない
・放火されたまま放置されゴミの不法投棄が絶えない
・建てられた当初から登記すらされていない
・そこで孤独死した人がいる分譲マンションの空き住戸
・相続放棄で管理費滞納が積み上がる分譲マンションの空き住戸 

……etc.

これらはすべて、私が実際に出会った「空き家」たちです。こうした「問題空き家」に対しては、「ここまで放置する所有者がけしからん!」といった批判的なまなざしが多く投げかけられるかもしれません。

しかし、空き家の実態をよく調べていくと、所有者自身、対応したくても対応が難しいケースが非常に多く、所有者だけを責めるのは酷ではないかということに気づかされます。

所有者が高齢で資金的に困窮している、所有者が判断を下すことが困難である、相続人同士で意見がまとまらない、何代も続いた相続未登記で所有者多数となり身動きが取れない、など、様々な理由があるからです。

このように、「空き家問題」は非常に複雑化・多様化しており、単純にひとくくりにまとめて論じていても、一向に解決できないことがわかってきました。

空き家問題が社会的な関心事になってきたこともあり、国や自治体によって、空き家への様々な対応策が進められています。

2015年2月には、空家等対策特別措置法(以下、空家法)*1が施行され、地域の安全・衛生・生活環境・景観などに著しく悪影響を与えている空き家に対して、公的な措置を講じられるようになりました。また、ほとんどの市町村で、空き家を担当する係や課が設けられるようにもなりました。

しかし、財産権が強い日本では、読者の方々が想定されるよりも相当ひどく荒廃した状態で、かつ通学路に面しているなど、緊急性が高い空き家にしか対応できていないのが現状です。

このまま放置されると、地域に悪影響を及ぼす「荒廃空き家」になりそうな予備軍に対しても、市町村は、所有者の連絡先を調べて、適正な維持管理や是正をお願いするといった対症療法的な対応しかできていません。

いずれは荒廃空き家になってしまう(photo by iStock)

同時多発する「問題先送り空き家」

野村総合研究所によると、このまま空き家の除却や他の用途への有効活用が進まなければ、2013年に約820万戸だった空き家が、2033年には約2150万戸になり、3戸に1戸が空き家という将来がもうすぐやってくることが予測されています。(1)

ではそもそも、なぜこんなにも空き家が増えるのでしょうか?

それはまず、実家の相続をきっかけに空き家化することが多いからです。

先祖代々の土地や家を相続し、実家に住むことが前提とされた一昔前と異なり、核家族化が進行した現代では、子供世代は実家を離れ、それぞれ自分の家を持っていることが多く、相続した実家に住むというケースは少なくなっています。

就職や結婚などで、実家には戻らないと決めたときから、実家の空き家化は始まっているわけです。

相続が発生した段階で、すぐに実家の売却や賃貸化といった何らかのアクションを起こせばよいのですが、ずっと受け継がれてきた仏壇もあるし、遺品の整理をする必要もあるし、処分というとなんとなく後ろめたいし……と心の整理もつかず、「今はそんなに困っているわけではないし、とりあえず置いておこう」というケースが多く見られます。

また、自分の家や土地にはまだまだ資産価値があると信じて疑わず、「保有しておけば、いずれ値上がりするだろう」と期待して頑なに持ち続けているケースも(特に高度経済成長期を生きてきた世代に)あります。

さらに、誰が実家を相続するのか結論が出なかったり、どのように財産を分けるのか意見がまとまらないために、とりあえず相続人で実家を共有してお茶を濁すケースもあります。こうした状況は、自分の実家だけでなく、配偶者の実家、それぞれの父方・母方の実家で同時多発的に生じます。

そこで『老いた家 衰えぬ街』では、「相続後にとりあえず置いておく空き家」を、「問題先送り空き家」と呼ぶことにします。

4戸に1戸がすでに「空き家予備軍」

さて、2025年には団塊世代が75歳以上となり、全国民に占める割合が20%近くにまで一気に膨れ上がると予測されています。

なんと、国民の5人に1人が、75歳以上になるという計算です。

さらに、1年あたりの死亡者数を見ると、2015年は約129万人ですが、2040年には168万人になると予測されています(2)。これは、毎年、政令指定都市が一つずつ消滅してゆくほどの規模に相当します。

高齢世帯が持っていた住まいの相続が増えていくことは確実です。まさに、日本では大量相続時代が目前に迫っているのです。