海上保安庁がひそかに励む「日本の領海を広げるぞ大作戦」とは何か

ドローンが陸地を探して…
半田 滋 プロフィール

日本も資源小国から脱却か?

今回、未発見の低潮高地を探す調査に使うAOVは、長さ3mのサーフボードに様々な計測装置や通信機を載せた、海に浮かぶ観測装置である。ソーラーパネルが張り付けられ、機器類を動かすのに必要な電気を自家発電する。

この観測装置の下の海中には水中グライダーがつり下げられ、6枚のウイングが波の上下動を推進力に変える。平均速度1・3ノット(時速約2・4km)というゆっくりした動きながら、リモコンで行き先を自由に変えることができるという。

 

このAOVの観測によって最低水面が決まり、さらに航空機によるレーザー探知によって最低水面の上にある低潮高地を発見するという二重の観測体制により、低潮線を高精度で確定させる。これまでは地上に置いた観測機器を使っていたが、潮の満ち引きなどによる状況の変化を精密に反映させることが困難だった。

担当する海上保安庁海洋情報部の幹部らは、今回の精密観測により、「領海やEEZが広がるかもしれない」と期待を寄せる。

そこで思い出されるのは、今年4月、日本の最東端にある南鳥島周辺の海底にあるレアアース(希土類)の資源量が、世界の消費量の数百年分に相当する1600万t超に達することが判明したという明るいニュースだ。

このレアアースが眠るのは、南鳥島のEEZの海底である。さらに日本のEEZが広がれば、資源小国から脱却できる可能性さえある。

そこで海洋情報部の幹部に「では、調査する海域は南鳥島や沖ノ鳥島がある太平洋側ですね」と尋ねたところ、「いや、調査は日本海側で…」と意外な答えが返ってきた。

そうなのだ。AOVが設置されるのは、新潟以南の本州および九州に面した日本海側、そして南西諸島西側の東シナ海というのだ。

どういうことなのか。

日本政府は南西諸島と中国大陸との真ん中に中間線を引いて「日中中間線」とし、これを境界線にすべきだとの立場をとっている。

しかし、中国、韓国はともにこの中間線を越えて、沖縄のすぐ西側にある細長い海底の窪みである沖縄トラフの近くに自国の「大陸棚がある」と主張。両国はそれぞれ2012年、国連海洋法条約に基づき設置された大陸棚限界委員会に「沖縄トラフまでが自国の大陸棚だ」と大陸棚の延長申請を提出した。

中国・韓国の申請している「大陸棚」(海上保安庁資料より)

同条約は、海底地形などの条件を満たせば、EEZの200海里を越えても漁業や資源開発が可能な「大陸棚」を設定できると定めている。仮に中国や韓国の主張が通れば、沖縄のすぐ西側の海域で中韓両国の経済活動が認められることになる。