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# 日産

ゴーン事件を見て感じる「グローバルスタンダードと日本の常識」の差

そして気になる自動車産業のこれから

「巨額報酬」は問題ではない

いま、ビジネス関連で最も旬な話題は、なんといっても「カルロス・ゴーン事件」であろう。これは現在の私の専門であるマクロ経済分野とは直接関係ないが、なかなか興味深い論点を提供してくれているので、この場を借りてコメントしたい。

もともと筆者は経営学科出身で、大学時代のゼミでは「経営戦略・経営組織論」を専攻していた。卒論は必須ではなかったが、卒業単位が足りそうになかったので、「M&A時代の日本企業の経営戦略」という内容で卒論を書き、なんとか卒業した(卒論の単位数はかなり大きかった)。

その後、シンクタンクに配属になったが、研究の一助になればということで、大学時代の恩師のTeaching Assistantなどもやったことがあり、この手の話に全く関心がないというわけではない。

ところで、今回、カルロス・ゴーン氏は、「役員報酬の過少申告」による有価証券報告書虚偽記載の容疑で逮捕された。有価証券報告書に記載されていた最近5年間のゴーン氏の報酬は約50億円だったが、実際は約100億円近い金額であり、この「巨額報酬」が世間の注目するところとなった。

その後、記載されていなかった分は株価連動型報酬で実際にはまだ支払われていないことや、「コンサルタント料」という形態で退職後に支払われる予定であったことなどが報じられており、この「未実現報酬分」の取り扱いをどうすべきなのかという点に関しては、弁護士や税理士といった専門家の間でも議論が分かれているようだ。

メディア報道の大多数は、この「巨額報酬」、さらにいえば、これほどの巨額報酬だけではなく、贅沢な暮らしにかかる費用を次々に会社に付け替えた「強欲」ぶりを非難している。

ゴーン氏が得意とする経営手法が大胆なコストカットで、日産でもゴーン氏によるリストラによって路頭に迷った従業員が多かったとみられることから、この強欲ぶりを、最近の日本の所得格差の問題にリンクさせる報道が目につく。

その後、真偽は不明だが、ゴーン氏個人の投資失敗によって生じた約17億円にも上る巨額損失(報道内容から推測すると「仕組み債」に近い極めてリスクの高い金融商品だったと思われるが)がゴーン氏の指示で日産子会社へ付け替えられたとする報道もあり、日本人の感覚からあまりにかけ離れたゴーン氏の強欲ぶりばかりが際立つ展開となっている。

日々の暮らしに汲々としている身からすれば溜飲を下げる思いだが、しかし、この批判は事件の本質から離れているといわざるを得ない。

 

確かに有価証券報告書虚偽記載や個人の投資損の付け替え(これは「背任」になるのだろうか)などが事実であれば明らかな法律違反なので批判・処罰されてしかるべきである。だが、経営トップの巨額報酬自体は、グローバル企業では「当たり前のこと」である。

自動車業界をみても、ゴーン氏の報酬は米国の自動車メーカーのCEOの報酬を下回っているとの報道もあった。きちんと自分の職務を全うしたのだという自負がゴーン氏にあったのならば、堂々と正規の倍の報酬金額を有価証券報告書に記載し、経費については自腹を切ればよかっただけのことである。