任天堂「マリオカート裁判とネットで大拡散したクッパ姫」を読み解く

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木村 剛大 プロフィール

「二次創作」という用語の意味

ここでのキーワードは、「二次創作」。

一般に「二次創作」という場合、①すでにある著作物をベースに二次的著作物をつくること(→ベースとなった著作物の権利者の許可がいるケース)、②既存の表現をベースとして二次的著作物ではない新たな表現物をつくること(→ベースとなった著作物の権利者の許可はいらないケース)、を特に区別せずに使われることが多い。

どちらも「二次創作」といわれるが、その中身は大きく異なる。二次的著作物になると(上記①)、元の著作権者の許可、つまり、クッパ姫でいえば任天堂の許可を得なければ著作権侵害になるから、全く次元が違う話になる。

では「二次的著作物」というのはどのようなものか?考え方としては、新たな表現を加えても、ベースとなった著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得できるときは二次的著作物なのだが、この説明では分かりにくいだろう。

具体例を紹介すると、フラねこ事件(大阪地判平成27年9月10日(平成26年(ワ)第5080号)裁判所HP)がある。この事件は、被告がインターネット上で見つけた黒猫のイラスト(左)にフラダンスの衣装を組み合わせたイラスト(右)を制作したケースである。

このケースでは、フラダンスの衣装は新たに創作されているものの、黒猫の顔はほぼ同一であるから、右のイラストは、左のイラストの二次的著作物という関係になる。

【フラねこ事件で問題となった原告イラスト(左)と被告イラスト(右)】
(出典:大阪地裁判決別紙)

これに対して、ベースとなった著作物のアイデアだけを利用して新たな表現物をつくることは二次的著作物にはならない。これは、新しく創作した人の別の著作物になる。

実際に裁判になった例としては、マンション読本事件(大阪地判平成21年3月26日(平成19年(ワ)第7877号)裁判所HP)がある。

【マンション読本事件で問題となった原告イラスト(左)と被告イラスト(右)】
(出典:大阪地裁判決別紙)

この事件では、裁判所は、右のイラストは、左のイラストの著作権侵害にはならない、つまり、二次的著作物の範囲ではなく、別個の著作物だと判断した(実際には多数のイラストが問題になったのだが、いずれも類似しないと判断している)。

右のイラストは左のイラストを参考にして描かれたことが認定されていて、雰囲気も似ていると感じるかもしれないが、著作権法での類似の感覚はかなり狭いと理解しておいて丁度よいだろう。

 

さて、クッパ姫はどうだろう? クッパと似ているかというと角が生えている点は共通するが、その他はそうでもない。ピーチ姫とは似ているだろうか? やはり目の印象や顔の特徴を見ると、かなり違いがある。

この程度の類似性だと、二次的著作物の範囲ではなく、別個の著作物というべきだろう。クッパやスーパークラウン、ピーチ姫といった任天堂の設定を利用してはいるのだが、具体的な表現を利用したわけではないから、著作権の範囲は及ばないのである。

これと似た状況としては、ある小説の続編を原作者でない人が勝手に書いた場合に、原作の著作権の侵害になるのか、という問題がある。これも、原作のアイデアや設定は利用しているわけだが、具体的な表現、描写が共通していなければ実は著作権法ではセーフになる領域といってよいだろう。