任天堂「マリオカート裁判とネットで大拡散したクッパ姫」を読み解く

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木村 剛大 プロフィール

著作権法の「難問」

任天堂は、MARIモビリティによるコスチュームのレンタルがキャラクターの貸与権(著作権法26条の3)を侵害するといって著作権侵害だとも主張していたが、裁判所は判断しなかった。

著作権法では、著作物を著作権者の許可なく公衆にレンタルすることが禁止されている(これが貸与権)。たとえば、自分で漫画を買ったとしても、それを不特定の人にレンタルするには著作権者の許可を得なくてはいけない。

判決では不正競争防止法で結局コスチュームのレンタルが禁止されるので、著作権侵害は判断不要という判示がされており、これはもちろん正しい。しかし、おそらく著作権について東京地裁はできれば判断したくないという思いもあったのではないだろうか。

コスチュームが著作物だとすると、MARIモビリティがコスチュームを利用者にレンタルする行為は、貸与権の侵害でシンプルだ。もっとも、この判断をするためには、実用品のデザインを著作権でどこまで保護してよいか、という著作権法の難問に取り組まなければいけなくなる。

〔PHOTO〕gettyimages

コスチュームは服である。服は実用品だ。何が難しいのか。

仮にマリオのコスチュームは著作物だとする。そうすると、では絵に描いた靴を実際の靴としてつくったらそれも著作物なのか? マリオのコスチュームは著作物で、絵に描いた靴は著作物でないとすると、どうやって区別するのか? コスチュームが著作物だとすると、コスプレをした写真をSNSにアップロードすることも著作権侵害(複製権、公衆送信権の侵害)になるが、それでよいのか?

 

また、不正競争防止法では表示(キャラクター)が有名かどうかが保護の条件になっているからこれを正面から考慮することができた。これと違って、著作物になるかの判断では有名かどうかを理論的には考慮しない(事実上は影響するかもしれないが)。

マリオのコスチュームを著作権で保護すると、その周辺事項との境界線をどう引くのかという問題もあり、なかなか難しいのである。