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ゴーン事件・仏政府とルノーの批判に、日本の司法は耐えられるのか

もし、耐えられないことがあれば…

フランスとのギャップ

日本の常識は世界の非常識――。

経済リーダ-のカルロス・ゴーン容疑者を電撃逮捕した日本の司法に対し、仏の政府とメディアが、「司法の歪み」を指摘、ゴーン容疑者の出身地であるブラジルやレバノンを巻き込んで、攻撃を仕掛けようとしている。

 

仏メディアが報じるゴーン容疑者が置かれた環境は、確かに仏の刑事司法の現状とはかけ離れている。

接見禁止処分を受けて、弁護士と大使館関係者以外は家族ですら面会できず、取り調べに弁護士は立ち会えず、勾留期間は最長で23日間に及ぶ。その間、ゴーン容疑者は東京・小菅の拘置所の3畳の独房に入れられ、食事休憩と就寝時を除いては、連日、過酷な取り調べを受け続ける。

葛飾区小菅にある東京拘置所(Source:Own work)

仏では、殺人、レイプ、放火など再犯の恐れがある重犯罪はともかく、経済犯や汚職など知能犯的事件は、勾留期間は最長で96時間(4日間)と決まっている。

取り調べには弁護士が同席、検察資料は開示され、家族との接見も可能。閉塞感、孤独感にさいなまれることはない。

なにより仏メディアが指摘するのは、事件は日産幹部が「ゴーン排除」を狙ったクーデターである、ということ。大手紙『ル・モンド』は、「日産からゴーン会長を追い出す陰謀」と、報じた。

その見方は、大筋では正しい。

私は、本コラムで「ゴーン容疑者が『ニッポンの国策捜査の生贄』となるまで」(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/58592 2018年11月22日掲出)と、題して、今回の事件は、日産と政府(経産省)と検察が、三位一体となってゴーン容疑者を逮捕した「国策捜査」だと報じた。

それだけだと確かに陰謀論だが、ゴーン容疑者には、逮捕容疑の役員報酬の過小記載のほかに、投資資金の流用、経費の不正支出など数々の疑惑があった。不正を告発によって正そうとする動きがあり、導入された司法取引を利用して検察がそこに切り込むこと事態は隠謀ではない。なにより、政治経済が織り成す特捜案件は、大なり小なり国益が優先される国策捜査である。

日産サイドの情報提供によって明らかになった引退後に受け取る80億円の契約や、記載していない40億円の株価連動報酬、投資会社を利用した自宅利用、姉への年間1000万円の支払いなど、ゴーン容疑者が日産を“食い物”にしていたのは事実だ。

マクロン大統領に忠誠を誓って22年までCEOの地位を得たゴーン容疑者が、自らの保身と利得のために日産をルノーに売り渡すつもりなら、それを日産プロパー幹部が、検察に駆け込んで「ゴーン排除」に動き、犯罪の事実が確認され、国益に沿うと判断した検察が捜査着手、それを政府が支援することに、何の問題もなかろう。

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ただ、事件はゴーン容疑者とルノーにとっては予想外の展開を見せている。というより仏の刑事司法とは異なる点が多すぎて、勝手が違う。仏では、重要事案は予審判事が担当し、警察に証拠を集めさせ、被疑者を尋問、事件解明が必要だと判断すれば、訴追して公判が開かれる。

最近の例でいえばサルコジ元大統領のケースである。リビアの故・カダフィ大佐からの不正献金、捜査を巡る不正情報提供など、数々の疑惑を指摘され、追及を受けているサルコジ氏だが、仏当局は今年3月20日、リビアからの不正資金で身柄を拘束、48時間の取り調べを行なった。今後、予審判事が捜査を進め、訴追するかどうかを決める。

また、サルコジ氏については、司法当局幹部にポストの斡旋と引き換えに捜査情報を得た疑惑が指摘されていたが、捜査をしていた予審判事は、3月29日、あっせん収賄などの罪で訴追し、裁判を開くことを決定した。疑惑だらけでもサルコジ氏は自由の身だ。

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