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検察はゴーン容疑者をさらに追い詰める「本丸」を隠しているのか

有報虚偽記載は、突破口に過ぎない‥?

ゴーン容疑者以外の責任は

日産自動車の会長だったカルロス・ゴーン容疑者の不正事件に絡んで、日産の有価証券報告書(有報)に「適正」の監査意見を出してきたEY新日本監査法人や、有報を財務局に提出した法人としての日産に責任はないのか、といった議論が浮上している。12月19日に逮捕されたゴーン容疑者の直接の逮捕容疑が金融商品取引法違反の有価証券虚偽記載罪だったからだ。

いくらゴーン容疑者が権力者だったとはいえ、有報の作成には大勢の日産社員が関与しているうえ、有報の情報が正しいかどうかをチェックしてお墨付きを与えてきた監査法人も関わっており、ゴーン容疑者と、同時に逮捕されたグレッグ・ケリー容疑者だけでは、到底完遂できない犯罪だからだ。

有報虚偽記載罪を犯した場合、その有報を提出した法人は、金融庁から課徴金を命じられ、証券取引所からは上場廃止などの処分を受ける。虚偽記載を見逃した監査法人も業務停止命令や課徴金の支払いを求められ、監査をした会計士個人も業務停止などの処分を受ける。経営者も東京地検特捜部に告発され、刑事処分を受けることになる。

巨額の粉飾決算が表面化した東芝の場合、法人としての東芝は課徴金の支払いを求められ、監査をした新日本監査法人にも多額の課徴金を課せられた。また担当した会計士は業務停止処分を受け、法人を退職に追い込まれた。

一方、証券取引等監視委員会は東京地検特捜部に対して東芝の歴代社長の摘発を求めたが、結局、誰ひとり逮捕されずに終わっている。

今回の日産事件は流れが逆になっている。経営者トップだったゴーン容疑者は逮捕され、いきなり身柄を拘束された。有報の虚偽記載を罪に問う以上、法人としての日産や監査法人の責任は追及されるに違いない、と誰しもが思っている。だがどうも、そうした動きにはなりそうにない。

 

監査法人は何をしていた

そんな中、日本経済新聞がすかさず記事を出した。

「監査法人、日産に疑義指摘 11年ごろから複数回」という見出しで社会面に掲載された。ゴーン容疑者が使う海外の住宅などを購入していた日産のオランダ子会社「ジーア」について、監査法人が2011年以降、複数回にわたって「投資実態などに疑義がある」と指摘していた、という内容だ。

しかし、本当に監査法人は疑義を指摘していたのだろうか。

ジーアはペーパーカンパニーで資本金は60億円である。日産自動車の連結ベースの純資産額は5兆6887億円。単体の純資産額でも2兆5274億円に上る。連結子会社は193社だが、有価証券報告書に名前が載っているのは主要な50社弱で、ジーアはもちろん掲載されていない。

監査法人が監査する場合、重要性の原則というのがあって、全体への影響を及ぼさないものには、よほどの事がない限り、注意を止めない。今回の不正の核のひとつと現段階で見込まれているジーアに、監査法人が早くから気が付き、「疑義」まで指摘していたとすれば、たいしたものである。普通の監査ならば、60億円が投資に回っているかどうかなど、気も止めないと考えていい。

監査の過程で内部告発が会計士に寄せられるなど、問題指摘があった可能性もあるが、それが有報の虚偽記載につながるような不正だと気がついていたのなら、当然、有報の修正を会社に求めるべきだった、ということになる。

また、犯罪につながっているような私的流用だとすれば、金融商品取引法の193条の3に従って、当局に不正を告発しなければならない。いずれかの行動を取らずに疑義を指摘していたと言われても、それで責任免除とはならない。