「中国差別動画」で締め出されたドルチェ&ガッバーナの哀しき未来

売上の3割以上が吹っ飛ぶ可能性
長沢 伸也 プロフィール

このときガリアーノ氏は、パリのカフェで泥酔し、ユダヤ人差別的な発言をした容疑で警察に一時拘束されたほか、「私はヒトラーが好きだ」「あなたの両親は毒ガスで殺されたほうがいい」などと発言する様子が収められた動画も公になった。これが原因で、騒動のわずか1週間後、1996年から15年にわたりデザイナーを務めた「クリスチャン ディオール」を解雇されている。

だがガリアーノ氏はその後、クリスチャン ディオール前社長(現LVMHファッショングループの会長兼CEO、ならびにLVMH執行委員会のメンバー)のシドニー・トレダノ氏を相手取り、「まだ契約が残っているので、解雇は無効である」と裁判を起こして勝訴した。

つまり、このときの素早い追放劇には法的に問題があったわけだが、おそらくトレダノ氏はそうしたリスクを承知でガリアーノ氏をクビにしている。迅速な意思決定で、ブランドを守ることを優先したと考えられるのだ。

2017年のガリアーノ氏(Photo by gettyimages)

これに対してガッバーナ氏は、商品にも彼の顔をかたどったアップリケを施したものが存在するなど、自身の名を冠したドルチェ&ガッバーナというブランドの共同経営者であると同時に象徴でもある。簡単に辞任するわけにもいかず、対応が後手に回った結果、傷口が大きくなったといえる。

 

ブランドは「終わる」のか?

では、ドルチェ&ガッバーナの命脈は今回の炎上で断たれてしまうのだろうか。筆者はそこまで悲観はしていない。

というのも、ドルチェ&ガッバーナはすでにファッション業界において、他では代替できないブランドのアイデンティティを構築している。例えば図柄である。バーバリーは格子柄、ミッソーニは波模様、そしてドルチェ&ガッバーナといえば豹柄。中国の消費者がゴールドやアニマル柄といった派手な意匠を好むことは、すでに知られている。

ドルチェ&ガッバーナの服を着ている中国人が国内で非難される恐れはあるだろう。とはいえ、一度はファッション業界から「追放」扱いされたガリアーノ氏を見ると、その後「メゾン マルジェラ」のクリエイティブディレクターとして復帰、売上を大きく伸ばしてさえいる。

デザイナーたるガッバーナ氏が初心に返り、また萎縮することなく優れたデザインを提供できれば、復活は決して不可能ではないだろう。